2002 JULY vol.70
 英国&アイルランド・ジュニアゴルフ協会は1952年に創立された。「当時からすでに若者のゴルフ離れが懸念されてできあがったもの」と同協会のマイク・ラウンド氏は説明する。以下同氏のプレゼンテーションを要約する。

 子供へのゴルフのリクルートは、学校を通じて行うのが最良の方法である。しかし、私たちの長年の経験では、学校の教師はゴルフを授業に取り入れることに、否定的な反応をするのが普通だ。理由は、危険を伴ううえに、個人競技であることから一人ひとりに教えなければならず、手間がかかる。さらに多くのスペースが必要になることなどを、必ず主張してくる。

 しかし、イギリスではすでに多くのスポーツが学校教育の中で行われている。いつまでも手をこまねいていたら、多くの子供達はゴルフから背を向け他のスポーツを選んでしまう。年齢の早い時期にゴルフを経験させないと、ゴルフをスポーツとしてではなく、ただのレクリエーションとして受け止めてしまう危険性が生じる。

 そこで、教育学の学者の協力などを得て、小学生用にトライゴルフ(Tri-Golf)というゴルフ道具を開発した。安全性、子供にアピールする色彩、使い勝手が良いなどが特徴で、これを持って学校の先生たちを説得。学校の授業カリキュラムに組み込んでもらうことに成功した。

 また、体育の授業だけをターゲットにするのではなく、ゴルフのスコアの計算などをゲーム化し、数学を初めとする他の科目でもゴルフと触れられるプログラムも作った。

 現在トライゴルフは1000の学校で、6万人の生徒によって使用されている。

 この他、初心者センターを設立。子供に適した9ホールのコースなどを作り、さらに子供サイズのクラブを用意し、初めてゴルフに接する子供でも気軽にゴルフが経験できる環境を整備している。そこには年間1万5000人から1万8000人の子供達が訪れている。その内訳は女子が21%。10歳以下の子供達が47%である。さらに学校や公園、ショッピングセンターなどで、トライゴルフの移動初心者センターを運営している。

 こうしたジュニアゴルファー向けのプロモーションにとって大切なのは、勧誘と運営に携わる大人の存在、そして資金調達である。勧誘は学校を通じて行うのが最も効果的。いわゆる指導者はコーチとかトレーナーという言葉を避け、リーダーと呼ぶようにしている。彼らはPGAとリンクしながら技術指導というより、ゴルフの楽しさを子供達に教える役目を果たしている。

 資金については、我々の試算では1人のゴルファーが一生のうちにゴルフに使う平均金額は5000ポンド(約90万円・英国での調査による数字であるが、日本ではこの数倍以上の実数になると思われる)。ジュニアゴルファーへの投資はスポーツとしてのゴルフの普及活動に留まらず、ゴルフ産業への投資でもあることを、アピールする必要がある。


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