2003 JULY vol.73
ゴルフ界のいま、これから
 ここ10年、日本を取り巻く環境は大きく変化した。少子高齢化、国内生産の空洞化、価格破壊……。これらの影響が日本のゴルフ産業の基盤も揺るがしている。ゴルフ産業はこれからの日本経済に適応して、その経営を変革していかなくてはならない。また、ゴルフの魅力を正しく伝える行動を起こし、日本の未来を担う子供たちにゴルフの楽しさが体験できる機会を提供することも大切だ。
 そこでJGAでは「論理的な市場分析と市場対応システムの確立」、「適切なゴルフ振興策の立案と実施」を念頭においた「Golf 21」という提言をまとめた。この提言をもとに、すでにゴルフ振興策のポイントがいくつか検討されているので、それらを紹介していきたい。
 まずはゴルフ界の現状の把握から始めよう。ひと口にゴルフ界といってもその分野は様々だが、基盤となるのはやはりゴルフコース。ゴルファーがゴルフコースに来なければ、すべてのゴルフ周辺産業は成立しないといっても過言ではない。

 図1を見てもわかるとおり、ゴルフコースはこの10年で約430コース以上増加したが、一方で1コースあたりの入場者数は29.7%減少した。その結果、プレー費の値下げ競争が生じ、1コースあたり46.2%の減収に苦しんでいる。さらに預託金償還問題により、優良なコースが荒廃したり、訴訟事件によりゴルフのイメージが傷つくことはゴルフ産業全体にとってマイナス。ゴルフコースの危機は、ゴルフ産業全体の危機につながるので、ゴルフ産業界全体がゴルフコース活性化に協力する必要があるだろう。
図1・主たるゴルフ関連需要の推移
  1992年 2001年 2001/1992
ゴルフ人口(コース・千人) 12,742 12,425 97.5%
ゴルフ人口(練習場・千人) 18,693 13,638 73.0%
コース予備軍(千人) 5,951 1,213 20.4%
ゴルフ場数 2,028 2,460 121.3%
ゴルフ場入場者数(千人) 102,325 87,300 85.3%
年間回数 8 7 87.5%
1コース入場者数(千人) 50 35 70.3%
プレー(円) 19,200 14,700 76.6%
コース市場規模(億円) 19,646 12,833 65.3%
1コース売上高(百万円) 969 522 53.8%
練習場施設数 5,420 4,785 88.3%
練習場入場者数(千人 153,170 110,152 71.9%
練習場市場規模(億円) 3,080 2,170 70.5%
会員権市場指数 372.59 61.05 16.4%
ゴルフ用品市場規模(億円) 6,170 4,055 65.7%
トーナメント数(男子 48 44 91.7%
トーナメント数(女子) 50 41 82.0%
ギャラリー数(男子・人) 959,707 512,038 53.4%
ギャラリー数(女子・人) 715,656 292,621 40.9%
賞金金額(男子・万円) 389,000 343,000 88.2%
賞金金額(女子・万円) 237,150 229,203 96.6%
テレビ視聴率(男子・%) 8.3 5.6 67.5%
テレビ視聴率(女子・%) 6.2 4.3 69.4%
 そこで重要となってくるのが、ゴルフ人口(ゴルフ対象人口×参加率)だ。国勢調査とレジャー白書の調査結果をもとに1992年と2001年のゴルフ人口を比較してみると、全体では97.5%(1992年を100%とした場合)の減少にとどまっている。だが、この数字を世代別で見てみると実に顕著な差が表れていることが分かった。ポイントは大きく分けて4つ。まず1つめのポイントは、若い世代(30代以下)でゴルフ人口が激減していること。10代は69.3%、20代は58.7%、30代は36.3%と大幅な減少となり、274万人のゴルファーが失われている。ただし、対象人口が減少したのは10代の24.3%のみ。つまり、「ゴルフをやったことがある」という人の数は10年前と比較してもさほど減っていないが、「参加率」が著しく減少しているのである。若年層の「ゴルフ離れ」は間違いなく発生しているのだ。
 2つ目のポイントは、これまでゴルフ需要の中核を形成してきた40代にも陰りが見えてきた点が挙げられる。10年前と比較すると40代はコース参加率が20%、練習場参加率が34%と、ともに減少した。JGAの調査でも40代のコース活動回数(年間ラウンド数)は減少傾向にある。

 さらに深刻なのは、練習場参加人口の減少だ。10年前と比較するとゴルフ練習場人口は約505万人も減少している。つまり「いつかコースに出たい」と考えているコース人口予備軍群が減ってきているということ。これが3つめのポイントだ。
 しかし、その一方で50代、60代のゴルフ経験者は20〜30%増加した。コース参加率も実に50%以上増加しているばかりか、この世代は現在のゴルフ人口全体に対する構成比の54.1%を占めている。この数字を見ても分かるとおり、50代、60代のライフスタイルは、10年前と大きく変わってきているようだ。今後のゴルフ界の鍵を握っているのは、この50代、60代といっても過言ではない。


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