もうひとり18番を頭脳的に攻めて成功したのは田村尚之(賀茂)。田村は地元が広島県。41歳の社会人トップアマで、ナショナルチームに所属するだけあって、がんがん飛ばす若手選手とは一味違う攻め方を見せてくれた。ピンの手前に60~70ヤードの第3打を残し、ウェッジでピンの手前に落とすと傾斜で戻ってしまうことを知っていた。そこで、故意に3ウッドの2打を飛ばし、グリーンまで20ヤードのラフに置いたのだ。ラフからサンドウェッジでソフトに打ってピン手前8メートルに乗せ、確実に2パットのパー。この日、76ながら前日の68が生きてイーブン・パーの予選通過だった。「コースマネージメントは若手より少しだけ熟練していますから。攻め方の引き出しは多い方でしょう」と余裕の表情だった。「なぜか大山付近のコースは縁起がいいのです。古くは1993年の中四国オープンをここ大山GCで出て3位。おかげで日本オープンへの資格を獲りました。2001年の中国インタークラブは大山アークCCで個人・団体で優勝。2003年の中国アマをグリーンパーク大山GCで2回目の優勝。とにかく大山方面のコースではいい成績なのです」
東京理科大を卒業して、自動車メーカーのマツダに入社、13年間サラリーマンを勤めた。その後、親戚筋の鉄鋼関連会社に移って今に至る41歳。ナショナルチームの中でも最年長のサラリーマン・ゴルファーで、2児の父。「若い選手に混じってプレーして、彼らに少しでも“中年の考えるゴルフ”を知ってほしい」とベテランらしい落ち着いたコメントだった。
|