この日の難物はグリーン。4アンダーパーの68を5人もの選手が出す前日の結果を受けて、ピン・ポジションをやや難しい位置にセッティングしたからかもしれない。梅雨の時季だけに雨を予想してグリーン上の高い位置にピンを立てるのはトーナメントの常識。ところが皮肉なことに梅雨前線が南下して晴天になったことから各選手がパッティングに苦しむことになったのである。
例えば、18番、529ヤードのパー5。大山をめがけてゆるく登るフェアウェイの突き当たりにあるグリーンは横に長く、大山GCのメンバーでもてこずる名物難グリーンで知られる。この日のピンは手前から15㍍、左から5㍍の所で、微妙な傾斜が錯綜する位置だった。スティンプメーターで11フィート、コンパクション11。ローラーをかけたグリーンは3メートルのパットがカップのそばへ寄ってもラインによっては6~7メートル下へ転がってしまったもの。3パット、4パットは当たり前、なかには6パットする選手まで現われたからだ。しかし、ピンの位置は全選手にとって同一条件。1パットのバーディを奪う選手もいる。その代表例を挙げれば71・73の144で堂々と予選通過した尾家清孝(周防灘)だ。昭和64年(1989)年にこのタイトルを獲っている尾家は46歳。「18番のピンがタフな場所と噂に聞いていたので、右手前5㍍のパットを思い切り強く打ちました。ショートすると左に流れて同じ距離まで下がると思ったから。長年やっているとパットのラインは1本ではないと分かってくるもの。グリーンの速さとタッチで数本のラインが生まれるのです。どれを選択するかを瞬時に判断できることも技術です」と薀蓄を語ってくれた。
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