38年ぶり、数々の名勝負を繰り広げた廣野ゴルフ倶楽部にふさわしいチャンピオンが誕生した。片山の勝負への執念、コースへの思い、将来をにらんだ自らへの期待が凝縮したラウンドは鬼気せまる迫力があった。
2番ホール。6番アイアンのショットを5メートルにつけバーディーが先行した。7番、「我慢が生きた」と後で振り返る絶妙の8メートルのバーディーパットが入る。「カップ左2メートルへボールを打ち出しました。すごいスライスラインが入って」勢いがついた。ボギーなしで迎えた12番ホール(パー5)、3打目を1メートルにつけるとバーディーパットを決めガッツポーズ。アウト4ボギーで後退した川岸を抜き去ると2ボギー、
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1バーディーで懸命に耐える伊沢、強豪パリーと並んだのだ。
単独トップに立ったのは狭くてタフな14番ホール。9番アイアンで残り125ヤードを60センチにつけるバーディー。16番でボギーが出たが17、18番を1メートル弱につけるバーディーチャンス。パットは外れプレーオフも覚悟したが、他がスコアを崩し逃げ切った。
「今日はカップが本当に難しい位置に切ってあったので、ボギーが先行するぞと覚悟したら2番バーディー、7番で長いのが入って流れがよくなった」という。「ここ2ヶ月、本当に調子が良く、自分の中ではいつ勝ってもおかしくなかった」自信が確信に変わった瞬間でもあった。
日本の名コースランキングで常にトップランクを占める廣野への思い入れもプラスに働いた。難しいセッティングに対処しようと決めた戦略は3メートルのパットを徹底的に練習する大会中の過ごし方にはっきり現れている。「ショットは100ヤードからでも3メートルにしか寄らない。パーパットも3メートルが勝負になるだろう、との読みです。事実、4日間そのとおりでした」
日本で最も権威ある日本オープンのタイトルをついに手に入れた。日本アマ(92年)日本オープンローアマチュア(93年)日本学生(94年)とアマチュアのタイトルを総なめにしたあとプロとなって日本シリーズ(2000年、02年)日本プロ(03年)そしてついに攻略した”最後の砦”だった。「コースの難しさでいったら全米オープンをやってもタフさで評価されるでしょうね。選手の勇気を試される、逃げたらひどい目に合うコースでぼくは勝った。自信がつきました」
昨年賞金王になりながら通算17勝目は実に1年3ヶ月ぶりの美酒。「これからです。ワールドランクも現在65位だけどこの優勝で50位以内が見えた、世界に向け良い引き金になったんです」
片山の強さ復活。日本男子ツアーにひと筋の光明が見えた。
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