記者会見の間中、目頭を指先で押さえる仕草が続いていた。込み上げる口惜しさから目が潤んでいたのだ。記者からの「お疲れさん!」の声に頭を下げた後、手にしたタオルを顔に当てると、伊藤勇気(日本大1年)はトイレに向かって歩きながら、声をあげて泣き出した。
「昨日の2回戦のマッチからパッティングのミスが多くなり、今日もパットに苦労しました。」と敗因がパットにあったことを認めた。午前のアウト9ホールで3ダウン。インに移って、いつものスロー・スターターらしい伊藤の攻めるゴルフで、12番ホールを終わって1ダウンにこぎつけた時は“得意の逆転劇のパターンか?”と思わせたものだったが、パットに不安を残したまま
の攻めるゴルフはショットにも影響する。13、14番のパー4ホールでショットを左に曲げて自滅した。
それでも、フォローの風になる池がらみの18番パー5ホールを1ダウンで迎えた伊藤には「バーディーを取れば追いつける!」という意識が残っていた。ティーショットは宇佐美祐樹も伊藤も左のラフに入れたので、2オンを諦めてレイアップ。残り100ヤードから宇佐美がピン左1.5mにつけたのに対し、伊藤は50ヤードのダウンヒルのライ。実は9番パー5でもまったく同じ状況からサンドウェッジで低いボールを打って、ピタリ50cmにつけてバーディーをモノにしていた。「9番ではダウンヒルのライだったので、勇気を持ってサンドウェッジのフェースをオープンにして打ち、スピンを効かせました。でも、18番では思いきりフェースを開けなかったので、スピンがかからず奥のカラーまで転がったのです。」と7mの勝負パットを外し、1ダウンのまま敗北した理由を語った。
勝負所のパットをアメリカ・ツアーでは“クラッチ・パット”(clutch putt=危機のパット)というが、伊藤のサンドウェッジでのショットはまさにそれ。なのに「勇気を出してフェースを開けなかった」とは、彼の名前にふさわしくないメンタリティだったのでは?
宇佐美にしてみれば、04年の日本ジュニアに2打差で負けて2位だった相手の伊藤に雪辱を果たした結果だった。
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