そして、後半の18ホールに入ると、先輩格の金のショット、特にショートゲームの距離感がわずかに狂い出したのか、康に1アップまで肉薄された。試合後の談話で、「途中で、スタミナ切れを感じました」と言ったのはこれを指す言葉かも知れない。しかし、それも一瞬で、4番、9番ホールのバーディーでまた3アップに挽回するのだから、韓国の若者は凄い。
インに入って10番パー4で、康のセカンドがグリーンをオーバー。排水溝付近の特に深いラフ。しかも、ピンとの間にマウンドがあり、グリーンは下り傾斜。この難問に康はフロップ・ショットで正解を出そうと挑んだが、カップを5mオーバーしてボギーを叩いた。これで、金の4アップ
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事実上、勝負はここでついていた。クールに見えるが、この日の気温27度以上に熱い戦いがふたりの心中には繰り広げられていたのだろう。
勝負が本当についたのは14番パー4だった。382ヤードと距離の短いホールだが、2打でグリーンに打ち上げるレイアウトで、ピンの位置は中央でもかなり強く受けた傾斜がある。奥行き25ヤードしかないが、出来ればピン手前につけ、上りのパッティングラインを残したいところ。しかし、金の114ヤード、ピッチングウェッジのショットで放たれたボールはカップ奥の5mに止まった。康は2打を引張ってカップの左10m。惜しくもバーディーを外した康を見て、ウイニングパットに挑んだ金のパターが静かに動いた。ほとんど触っただけのパター・フェースとボールの接触にもかかわらず、ボールはスルスルと転がり続け、1カップ分のスライス曲線を描いた末にグリーン上から姿を消した! 5and4で金の日本アマ2連勝が決定した瞬間だった。このシーンを見ていたギャラリーは20人、テレビ・カメラ4台のクルー10人、あとは競技委員の数人だった。
「長い歴史ある日本アマのタイトルを連続して優勝出来て、感無量です。もっと練習して、もっと立派な選手になれるように頑張ります」とわずかに微笑み、ハニカミながら語る金の表情はプレー中とまったく違って柔らかいものだった。
それにしても、韓国パワーが世界のゴルフ界に炸裂している時代を反映したような大会でフィナーレを迎えただけに、日本ゴルフ協会を代表して挨拶した大橋一元常務理事のスピーチが会場を埋めた人々の胸に響いたことだろう。
「韓国選手の活躍は素晴らしい。でも、日本のアマチュア選手のレベルをもっと向上させ、韓国に追いつきたい気持ちです」
ラウンドを見守ったあるJGA役員が呟いた。「ここ数年、日本で日韓ジュニア対抗戦を開いていますが、韓国チームの圧勝が続いている。このふたりの選手の後にも、強いジュニアが大勢いて、当分の間、韓国人選手がタイトルを独占するのでは・・・・」
“鉄は熱いうちに打て!”の諺通り、より一層のジュニア育成が急務という印象が残った。
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