初出場、初優勝の快挙だった。新チャンピオンの前田は、激戦の最終組ではなく、一組前からタイトルをもぎ取った。
1番で4メートルをねじ込み、5番1メートル、8番2メートルとバーディーを重ねた。しかし、9番ボギーとし、インに入ってからは、ずっとパーが続いた。それでもトップの小平、ナショナルチームの藤本、3位タイスタートの大槻の3人は揺るぎなく、前田の存在は小さく見えた。だが、大詰めのプレッシャーの中、スコアを崩す最終組を尻目に前田が急浮上した。17番、10メートルのフックラインがカップのど真ん中を割る、前田の強烈なバーディー。これで一気にトップに立った。
「6打差あったがアンダーパーで回
ろう」と決めて、スタートしていた。「霞ヶ関西コースはこの3年で5ラウンド。ティーショットが打ちやすく自分に合っている」と自信があった。
これまでのベストスコアは62。昨年、日本シニアオープン開催の嵐山CCでホールインワンを含む2イーグル・8バーディー・1ダブルボギー。「やればできる」の自信は164センチ、62キロの決して大きくない身体にいっぱいだった。
「こうして勝つと達成感があり、前向きにやってよかった。人生楽しくやりましょう」童顔をほころばせる。いくら浮かれてもいいことが待っていた。今年から優勝者には、日本オープンの出場資格が与えられた。日本ゴルフ協会から同大会の申込書を手渡されると、「どんな緊張感があるのでしょうね」と頬を染めて喜んだ。日本オープンはこの日、タイトルを手にしたのと同じコースでの開催だ。高校3年で、初めて出場し射止めたタイトルはさらに大きく実った。
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