マッチプレーに進出した32選手の関心の的は「明日はどの選手と当たるのか?」であったろう。2日間ストロークプレーの順位しだいで自動的に決まるシステムだが、そこには神様の悪戯のような顔合わせが出現することがあるから面白い。
その1回戦16マッチの中で、注目されたのは“マッチ9”小林伸太郎(泉国際GC)と牛島中(ミッションバレーGC)の21歳の大学生VS 43歳の社会人アマのいわば“親子対決”。小林は昨年のチャンピオンで、今大会でも4アンダーパーでメダリストを獲得、調子を上げてきていることは容易に想像がつく。対する牛島はプレーオフですべり込んだ3人のひとり。“中”という名前から“チュンさん”と
仲間から親しまれる九州のトップアマ。しかも、米国留学中から米国アマ界で活躍、全米アマに7回出場した経験もある。この日本アマでも今年で14回出場という常連組みのひとりなのだ。
しかし、深い洋芝のラフ、巨大なグリーンに起伏が大きく、しかもガラスのように速いコースセッティングでは牛島のベテランの味を発揮する余地はなかった。
アウトで小林が3upしてインに折り返す。10番でも飛距離の優る小林が奪って4up。13番では牛島の3パットで5upというワンサイド・ゲーム。14番ドーミーホールを分けた時点で5and4、あっさり決着がついてしまった。「自分のゲームが出来なかった。ショートパットを外しまくってボロボロでした。悔しいけど、小林君には連覇をして欲しい」と、負けた相手にエールを贈った。
続く“マッチ10”は“中年の星”対決。ベテラン大倉清(大博多CC)は46歳で、1988年大会(六甲国際)で川岸良兼についで2位の実績があり、中年になっても平均270ヤードというドライバーで日本アマの常連に復帰。牛島選手と並んで、いわば帰って来た九州のトップアマである。対する田村尚之(賀茂CC)はJGAナショナルチームのリーダー的存在で、粘り強いプレーを身上とする広島出身の選手。“博多と広島”の両雄が北国の北海道で対決する図だった。
ゲームの内容は一進一退、アウト9ホールで田村の1up。インに入って大倉の飛距離のアドバンテージが活きて、13、14番ホールを連取するが、15番池越えのパー3で、田村の乾坤一擲のショットが炸裂する。右からの逆風に向かって6番アイアンによるショットがピン手前にピッタリ。それを決めたのが田村の勝因だった。印象的なシーンは次の16番パー4ホール。大倉の第2打は40センチに寄る。田村も負けじと1メートル!両者バーディーでこのホールを分けたのだ。結果的に2and1による田村の1回戦突破となったが、学生ゴルフにはない渋いプレーと光るワザが展開する好ゲームだった。
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