「スタート前に緊張はしていませんでした」初のマッチプレー進出で初の決勝戦。初めて尽くしの日本アマとなった小平は、その言葉通り、けれんみのないショットで1番をスタートしていった。2番でグリーン右手前のバンカーからのアプローチを寄せきれずKimにリードを許すも、4番で残り100ヤードの2打目をピッチングサンドで1メートルにつけて、取り返す。
その後、6番からお互いにマッチを取り合う接戦の中で、徐々に小平の心境に変化が起きる。「最初は観客もいなくて、緊張もしなかったけれど、ホールが進むごとにギャラリーも増え始めて、少しずつ緊張してきた」小平は、午後に入ると昨日まで好調だったドライバーショットに
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乱れが出始める。10番でKimがバーディーを取り、迎えた12番(210ヤード・パー3)。オナーのKimが3番アイアンでビンに直接当てるショットを見せると、小平はティショットを右バンカーに打ち込んでしまう。カップまでの距離、傾斜を慎重に読んだ小平のバンカーショットは、「完璧」の手ごたえ。球は、イメージ通りグリーンのカラーに落ち、そのまま下り傾斜にのってカップに近づくかと思われた。
しかし、なぜか球は失速。3メートルの下りスライスラインのパーパットが残った。Kimが無難にパーをセーブした後の小平のパットは、下りを意識しすぎたのか、ラインを外れKimにリードを広げられる。これで気落ちしたのか、小平は前半を終わった時点で4downにまで差を広げられる。後半が始まるまでの30分の食事休憩のとき、日本大学の先輩に励まされ、気合を入れなおした小平だったが、勝負の流れを変えることができない。19ホール目でKimがバーディーを奪い、さらに差を広げられる。この日、小平の最後のチャンスが訪れたのは、22ホール目で6downを喫した直後のホールだった。KimがティショットをOBのミスでボギーを叩いたこの通算23ホール目の5番。小平が無難にパーセーブできれば、一気に流れを引き寄せることが出来たところ、小平もボギー。これで、勝敗の体勢は決した。
11番ではKimがチップインイーグルを奪って小平に引導を渡し、終わってみれば7and6の大差で日本アマタイトルを逃してしまった。「Kimとの飛距離は変わらない。小技の差だった。自分は洋芝のコースは初体験で、アプローチでクラブヘッドが引っかかってしまって…」と唇をかむ小平。「Kimの凄さは、ミスショットをしても全く表情を変えないメンタリティの強さ。自分は、途中から不甲斐ないショットやミス、3メートルぐらいのパットが入らなくて、自分自身に苛立ってしまった」と敗因を分析した。
「今週は、出来すぎだったと思う。自分の実力以上の結果が出せたし…でも、優勝したかった」と目を伏せた。勝った試合よりも負けた試合の方が学ぶことが多いといわれる。力負けを喫したこの日本アマで「アプローチの技術。メンタルの強化が必要だと実感した」と課題を手にした小平が、今後この敗戦を糧に日本大学の先輩たちに肩を並べるプレーヤーとなるのか。来年、成長した姿を見せてほしい。
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