石川は耐えた。大逆転にチャンスを残した。
最終組からひと組前、大観衆の中をスタートしたとたんのボギーだった。
1番ホール、ティーショットは右バンカー。あごに近く、セカンドショットはラフへ。3打目もグリーンオーバー、4オンしたとはいえカラーで4メートルのパットが残ったのを、やっとねじこんだ。
3番ホール、7番ホールとショットはラフに阻まれボギー。8番ホールでは木の根元に打ち込み4オンの2パット、ダブルボギーでうなだれるシーンもあった。
「自分のスイングを忘れた。8番ホールのアプローチなど頭がおかしくなりそう、どのくらいの強さで打てばいいのかさえわからなかった」という。日本オープ
ンの緊張感と優勝争いの中にいる喜び、それらがないまぜになったのだろう、アウトコースをなんと、41もたたいていた。
そんなピンチを救ったのは、こだわり続けた攻めの姿勢だった。9番ホール・344ヤードのティーショットをグリーン前のバンカーまで飛ばした。12番ホール・341ヤードの短いパー4もグリーン手前バンカーまでかっ飛ばして見せた。
「9番ホールで思い切り振ることで、左肩の入りが浅いことに気がついた。12番ホールではキャディーさんと、あのバンカーに入れよう、と気合いを入れて打った」
忘れたスイングを取り戻した瞬間だった。苦手のインコースは2バーディー・2ボギーのパープレー。優勝争いに自力で復帰した。
「(首位が)片山さんなのでチャンスはほとんどない」と言ったが、「1パーセントから5パーセントくらいは、5オーバーのみんなにチャンスはあるかな?」と一縷の望みを託した。
関西オープン優勝で出場権を得た今大会。ドライバーにこだわりパワーゴルフに徹した2度目の日本オープン。僅かなチャンスを自力で生かしながらやってきた、開き直った最終日である。何かを起こすなら17歳の若者の出番だろう。
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