名手・ベン・ホーガンがそうだったように、優れたショット・メーカーの“アキレスの腱”がパットにあることはよく知られる。“ゴルフでグリーン上のパットだけは別のゲーム”とゴルフ諺にあるくらいだから。湯原信光にもそうした“アキレス腱”あることは昔からファンも感知するところで、彼がここ一番のショート・パットのアドレスに入るとグリーン周囲のギャラリーが固唾を飲む雰囲気が生まれる。“もしや外すのでは?”と懐疑心が生まれるのだろう。この日も最終18番ホール。ここまで1オーバーパーでラウンドした湯原が1.5メートルにつけ、このバーディ・パットが入れば2位タイになるところで、やはりそんなムードと静寂がグリーンを包んだ。「強めに打つとカップの脇を抜けそうで、打ち切れませんでした」と、ラウンド直後の表情がまだ紅潮していた。結局、このホールはパーで、この日は1オーバーパー73の3位タイ。
「今日もパットのラインを読み切れず、不安を抱えながらのパットだから、思うようなタッチを出せませんでした。切れそうで切れない、切れないと思うと切れる・・・この連続でパットする前から半信半疑なのです。でも昨日までの3ラウンドは納得行くショット・パットが出来たので、その良いイメージを持って、米シニア・ツアーへ挑戦します」と胸を張った。永年闘った身体の故障も回復傾向にあり、このゲームでは体調も良く、ショットも切れ味鋭かったことを心の糧に、学生時代からの夢だった米国でのツアー活動に向けて跳躍する気分に弾みがついたのだろう。来週以降の米シニア・ツアーからの朗報が待たれる。
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