得意クラブはドライバー。でも、そのドライバーの出番は少なかった。39歳にして日本オープン初出場を果たした野仲は、大会前日の練習ラウンドで緻密な攻略メモを作っていた。ショットの調子もよかった。ならば、得意のドライバーを最大限に生かせる舞台ではないのか。
「いえ、調子に乗ってドライバーを振り回していいホールは、限られています。なによりも、フェアウェイから打たないことにはグリーンをとらえられない。メモが出来上がったところで、ドライバーを使ってもいいホールを確認すると、アウトは1、8番だけ。インも10、13、18番だけで合わせて5ホールでした。自分で作ったメモを信じて、それを徹底しながらラウンドしようと決めていました」
予想外の展開になったのは、スタートの3ホールであった。「パー、パー、パーと静かにスタートできれば最高だなって思っていたのに、いきなり3連続バーディーですからね。こんなはずじゃない。いいのか、これでって、ちょっと怖くなりましたよ。同時に、この分ボギーを打ってもいい、と気持ちが楽にもなりました」
ドライバー以外でティショットに使ったのは、6番パー5での4番アイアン、距離の短いパー4の15番ドッグレッグホールでのユーティリティークラブ、そしてその他のホールでの5番ウッドであった。
初出場とはいえ、2007年まで6年間日本ツアーのシード権を守ってきたベテランだ。じっくりと戦略を練り、自分のゴルフを最大限に生かす戦術を展開した。
「日本オープンを経験している選手に聞くと、難しいコースセッティングの中での厳しい戦いになるということだったので、自分としてはパープレーを目標にコツコツやっていくつもりでした。まさか、4アンダーパーのスタートになるなんて…。明日、一転して予選落ちなんてことにならないように、また、コツコツとプレーしていきたい。余裕が、油断になって、第1ラウンドでトップから予選落ちじゃ、シャレにもなりませんからね」
プロ18年目。第1ラウンドの4アンダーパーは「出来すぎ」と言いながら、舞い上がる様子もなく、自分のペースを守り通すことを心に決めている。
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