1イーグル・5バーディ・2ボギー。5アンダーパーと絶好のスタートを切った藤田寛之が、好スコアの第1の要因に挙げたのはパターだった。藤田はシーズン中、常に3本のパターを持ち歩いている。「エース」と呼ぶピンタイプのモデル、センターシャフトのマレット型、そしてL字タイプのマレット型の3本である。練習ラウンドでは、エースパターを使った。この日は、そのエースと、藤田自身が「投手でいえば3番手にあたる」というL字タイプの2本をスタート前の練習グリーンで試した。そして、3番手を先発起用することに決めた。
「3本とも信頼できるパターではあるのですが、その日の調子によって、エースパターをターゲットに合わせて構
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えると、ちょっとシャットフェースになっているように感じたり、タッチに違和感を覚えたりすることがある。そんなときは、2番手、それでも違和感があれば3番手といった具合に、自分は試合中でも、日によって替えることがあります。今日は、L字タイプが、一番しっくりきたので、それに決めました」
インからのスタート。10番ホールのティーショットをいきなりバンカーに打ち込んだ。ボギー。不安な立ち上がりを解消させてくれたのが続く11番のバーディだった。5メートルの難しい距離、ラインのパットが決まった。さらに12番パー5では、ピンまで45ヤードの第3打が、そのままカップに飛び込んでのイーグル。このホールはパターを使うことなく終わってしまったが、その後の4バーディは3メートル(15番)、4メートル(16番)、4メートル(6番)、8メートル(7番)と3番手パターがエースの役を果たしてくれた。
それでもホールアウト後の藤田は、慎重だった。
「スコアはよかったけど、グリーンにいくまでのショットには納得していません。なにしろ用意ドンでいきなりバンカーですから、自分に不信感を抱いてしまって…。そのあともティーショットでフェアウェイにいったのは4回だけ。内容からすると5アンダーパーという結果は、自分でも驚きです。日本オープン。本当に勝ちたい試合で、いいスタートは切れたけど、正直なところ、明日の自分に自信を持てない状態だから、どこまで耐えられるかが勝負だと思う。パープレーを基準に、少しでもアンダーパーを積み上げていく。そういうゴルフを続けられれば、最終ラウンドのバックナインに入るとき、(優勝を)狙える位置にいられるかもしれない。自分にあまり期待できない状態で、どういう結果になるのか。それを知るのが怖いような、楽しいような、ちょっと複雑な気持ちにさせられるスタートを切ったということでしょうね」
40歳台を代表する藤田。戸惑いの中でスコアをまとめる術だけは持ち合わせているようだ。
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