スウィングのタイミングが早くなっている。ボギーが先行した第3ラウンドのプレー。松山英樹はラウンド中に、そのことに気づいていた。そして、懸命の修正を図ってもいた。大ギャラリーに囲まれてのラウンド。最終組の1組前でのプレー。プロも出場する競技では、初めての経験で落ち着けなかったという。「あれだけのギャラリーに見つめられている中でボギーを打ったら恥ずかしいじゃないですか…」と、正直な気持ちも口にした。10番を終えてこの日2オーバーパー。11番でようやく本来のタイミングでショットを打ち出せた。第2打も、絶好のタイミングで打てた。ピンそば50センチ。これで修正ができた。そう思えたのもつかの間だった。
今度は、その50センチのバーディパットをはずしてしまう。
「きょうは、ダメだ」
声には出さなかったが、心の内で、自分をののしっていた。
不思議なことに、そこから自分のペースでプレーできるようになったという。スウィングのタイミングが戻り、パットも落ち着いてストロークできるようになると、12番から15番の4ホールで3つのバーディが決まった。
16番ホールのボギーを17番のバーディで取り返し、この日1アンダーパーへと持ち込んだ。迎えた最終18番ホールでは、ティショットを左の林に打ち込み、脱出させるだけというピンチ。ここも冷静にボギーで切り抜け、スタート時点と同じ7アンダーパーでのホールアウトとなった。
3打差の4位で最終ラウンドを迎える。日本オープンでは、第1回大会の赤星六郎以来のアマチュアの優勝を狙えるポジションをキープしている。
「優勝ですか? 落ち着いていけるか? すみません。すべて明日になってみないとわかりません。こんな大きな大会で、ポジションだけでいうなら優勝を狙えるという自分が、最終ラウンドにどうなるのか…。想像もつかないんです。自分のペースでできるのか。今日の前半のようにタイミングを失ってしまうのか、火事場のナントカじゃないですけど、考えもしなかった凄いゴルフができてしまうのか…。本当にわかりません。冷静に自分を観察しながらプレーするようにしたい。それだけです」
18歳の若者は、ちょっと戸惑いの中で最終ラウンドを迎える。
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