藤田寛之は、今週の自分のゴルフを分析して「日替わり弁当」だと言った。第1ラウンドは、パッティングに助けられ、昨日は、ショットがよくて、第3ラウンドは、またショットがいまひとつ…「悪いながらも踏みとどまることができたことが、自分らしいといえば自分らしい」と語った。
確かに藤田のゲーム運びは、しぶとく、粘り強く、簡単に諦めない。1打1打の結果がどうであれ、それをうまく紡いでいくと、そこに「藤田寛之のゴルフ」という絵柄としてできあがる。
スタート前、練習グリーンでパッティングの距離感を掴んで1番ホールへ行く。誰もがするように、藤田も今日のタッチを体と指先に記憶させた。ところが、1番ホールのグ
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リーン上で、そのタッチとグリーンのスピードに違和感があった。練習グリーンよりも遅いんだ、と思った。2番ホールで、ピン手前10メートルの距離をストロークしたとき、強めに打った。運良くカップに入ったけれど「外れたらかなりいったと思う」ほどだった。ようやく距離感がアジャストできたのは、3番ホールだった。ピン左15メートルの距離がぴったりときて、2パットのパー。これで、不安がひとつ解決した。
けれども「内容は、アンダーパーで回った感じがしないほど、良くなかった」という。
それが藤田の本領発揮である。藤田の強さは、きっと「ミスのアローアンス(誤差)」の設定が実に上手いことだと思う。よくショットの精度を高めたいあまり、ほんの少しのミスも自分が許せなくなって自滅してしまう選手がいる。完璧を目指すあまりショットの成否に完璧を求めてしまう。それでゲームを作る、ゲームを運ぶ、流れに乗せるというゴルフのもう一つのテーマがおろそかになるのだ。
藤田の場合は、例えば第1ラウンド、ティショットでフェアウェイをキープしたのが、わずか4ホールだった。でも、スコアは、5アンダーパーの66で回った。自分のショットのミス幅を狭めるのではなく、精神的に許せる範囲、ホールを攻めて行く上でミスしてもパーが拾える範囲を設定して、それ以内ならば、よしとする心の幅である。藤田は巧みなのは、その設定とミスした場合の処理である。
例えば、今日の最大のピンチだったのが、15番ホール、パー4である。左ドッグレッグ。その曲がり口からグリーンに沿って右サイドに池がある。ティーインググラウンドからは、ほぼ正面に池がある感じだ。319ヤード。左の林の上を狙っていくホールだ。藤田は、最後の転がりで、その池にボールを落とした。「左からのアゲンストでした。でも、(その池に行ったときに)そこから3打目だから、寄せワンのパーがあるな、と、自分で自分を確認するために言い聞かせたんです」ミスを悔やんで引きずるのではなく、ショットにはアローアンスがある。ミスがある。という心の幅を持っていたからこそ、次のショットへ前向きになれたのだと思う。
第3ラウンドを終えて首位。2位に1打差……。その状況を藤田は、こう解説する。
「まだ3日目(54ホール)が終わったばかりですから。ゴルフトーナメントは、72ホールをもって完結するわけですから、いまトップにいても、まだどうなるか解らない。最終的にトップにいられることが大事で、それに向かっていく途中だと思っています。もちろん、位置確認は常にしています。ゲームの中で、どこに自分がいるのかというポジション確認ですね」と言った。
「明日は、どんな日替わり弁当になるのだろう…」と語る藤田寛之のゴルフのお弁当は、どんな場合でも、実に味わい深く、噛めば噛むほどコクがあると思う。
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