優勝した金庚泰とは2打差の2位…。41歳の藤田寛之のゴルフは、敗れてなおギャラリーを唸らせる妙技があった。若手台頭という時代に、ゴルフゲームがパワーや勢いだけでなく、どれだけ技量の引き出しを多くして、肉体を鍛え、精神力を充実させることができるか、それができた選手は、かならずいい結果をもたらすと教えてくれた。
惜しみない藤田への拍手は、そういうひたむきに努力し精進を繰り返している41歳の男に送るものだった。
「(優勝争いをしているという)充実感はあります。この位置は誇りに思うし、プロゴルファーにとってこの上ない舞台だと思うけど、そこで結果を残すのが大事なので、単純に楽しいとかだけではすま
ないですね。今はいろんなものが蓄積されて(総合的に)自分の中で集中力が高まる時はあるので。ゴルフやっていて、結果楽しいことはあるけど、やっている最中は楽しいというのはないですね。そういう年齢にきちゃったかな」と第3ラウンドを終えたときに語っていた。楽しいというよりは、むしろいまは、この41歳という年齢で、どう充実したゴルフができるかを、自分自身で問いかけながらプレーしている感じなのだろう。
12アンダーパーで、武藤と金が並び、15番ホールで金が7つめのバーディをとって13アンダーパーとした。その15番ホールで、藤田は絶妙のバンカーショットを見せてくれた。3打差…。それでも諦めないというショットだった。そのバンカーショットを30センチにつけてバーディ…。このしぶとさが藤田を物語っていた。
「できるだけ優勝を意識せずに、自分のゴルフに徹しようと思いながらやったつもりです。ゴルフ(ゲーム)は、うまくいったと…自分のプレーができて全体的には、いい精神状態でプレーできたと思う」と藤田は、言った。
藤田は、タラレバを口にしなかった。すればするほど、辛くなるからだ。ただ、武藤が最終ホールで4パットしてスコアを崩し、その結果、藤田が2位に上がったことについては「情けないです。やるべきことは、自分のゴルフで2位になるべきことです」と単独2位のポジションには、複雑な表情をしていた。自分を追い詰め、自分自身のゴルフの精度を高めていく姿勢を崩さないことが、藤田寛之のゴルフなのだろう。
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