12~14歳の部では河野杏奈が5打差リードの利で辛うじて逃げ切った。15~17歳の部は、畑岡奈紗(翔洋学園高校1年)が勝みなみ(鹿児島高校1年)に6打差をつけての最終ラウンドだった。こちらは、勝が大逆転劇を演じた。
2日間で通算11アンダーパーの好スコアをマークしていた畑岡。同学年の勝が、この畑岡とラウンドするのは初めてだった。スタートホールの1番で畑岡が6メートルを沈める先制パンチを放った。
「ドライバーショットは飛ぶし、パッティングも上手い。強い選手だな…」。これが、畑岡のプレーを目の当たりにした勝の第一印象だった。
続く2番で今度は勝がバーディを奪い返した。
「やっぱり、ただ
では勝たせてくれない。バーディラッシュのゴルフが始まるのだろうな…」
これが、畑岡の勝に対する思いだった。
前半の9ホールで、6打差が4打差になった。そして、後半にターンして、両者の争いは、大きく動く。11、14番と勝がバーディを奪い、畑岡は12番をボギーにして1打差。16番をともにボギーにした後の17番に逆転劇が待っていた。先に打った勝は、ドライバーショットをフェアウェイに打ち出した。畑岡はドライバーショットをラフに打ち込んだ。勝の残り距離はピンまで105ヤード。「ピッチングウェッジで低めに抑えてラインを出すショット」(勝)は、狙いよりも低く飛び出したが、しっかりスピンがかかり、ピン近くに寄った。一方の畑岡は「乗らず、寄らず、入らず」(畑岡)のボギー。勝はしっかりとバーディに仕留めて、一気に逆転したのだった。
後半は3ボギーの畑岡は、ホールアウト後に言っていた。
「勝さんを意識しないように自分に言い聞かせていたのですが、プレーで意識させられてしまいました。どこからでもパーをセーブし、バーディをとってくるような気持ちにさせられて、自分のゴルフができませんでした」。
勝が13番で第2打をグリーンオーバーさせたピンチに難しいライからぴったりと寄せて、何事もなかったようにパーをセーブしたシーンが畑岡に強烈な印象を残した。さらに林から前方に張り出す松の枝の1メートルほどの隙間を打ち抜いてバーディにつなげた14番では、勝のここ一番での集中力と勝負魂に「圧倒されそうだった」。
名前だけで、そこにいるだけで相手に、周囲に、存在を意識させる。プロアマ問わずにビッグネームと呼ばれる選手の特長である。畑岡は、勝という名前に自滅させられたといっていいだろう。
「終盤の体力、集中力に差を感じないわけにはいきません。この敗戦は、自分のこれからに大きなテーマを与えてくれました」畑岡の潔い敗者の弁であった。
優勝した勝は、大勢の報道陣に囲まれると「泣きそうです…」といって、本当に泣き出してしまった。「すみません。本当に勝ちたかった大会で優勝できたので…」。
日本ジュニアには中学1年生から4年連続出場になる。初出場した2011年が3位、2年目が4位タイ、3年目の昨年が5位(ここまで12~14歳の部)、15~17歳の部となった今大会ではドライバーショットが不安定で「この調子では、これまでの流れからして6位かな…」と冗談のような予感まであったという。アイアンショットとパッティングでドライバーショットの不安定さをカバーし、最後は並外れた集中力とショット技術で大逆転。「プロの試合で勝ったことより、この優勝の方が、感激が強い。口に出したら余計な意識が膨らみそうだから黙っていましたが、本当に勝ちたかった。これで9月の世界アマに自信をもって臨めます」。
ゴルフ漬けだった夏。「この夏休みの、めっちゃいい思い出です」
最後は、ちょっとお茶目な高校1年生に戻って表彰式へと足を向けた。
|