廣野ゴルフ倶楽部には、距離がたっぷりあるパー4のホールがいくつかある。際立つのが、2番452ヤード。3番461ヤード。4番451ヤード。そして11番の458ヤードだ。距離があるだけでなく戦略的にも攻めあぐむ典型的なパー4だ。「この4ホールは、フェアウェイに届かない」と嘆くベテラン選手もいた。時代は違って、コースも改造されているけれど、かつて中部銀次郎が廣野ゴルフ倶楽部攻略の鍵はスタートの1番ホールから4番ホールだった」と言ったことがある。「私にとっては、1番ホールのパー5で4をとることに執着していた。かりに相手が同じ4であってもオールスクウェア。うまくいけば1アップ。でも、お互い5として分けと
いうことになると、その先やのコースと自分のゴルフの流れを考慮すれば、負ける確率が極めて高くなる。何故なら、私にとって、2、3番ホールは苦手でボギーとする可能性も高い。最悪でも4番ホールまでで1オーバーパー以内で収めたかった。するとバーディが獲りやすい5番ホール、さらに8番、9番ホールと流れが良くなる。ゲームの流れの鍵が1番ホールにあったのです」と語ったことがあった。そのゲームの流れは、いまも変わりはないのだろう。とりわけドライバーの平均飛距離が250〜260ヤードの選手たちにとっては、この長いパー4で苦戦を強いられる。
この日、廣野ゴルフ倶楽部で3アンダーパーを出して首位タイとなった選手たちは、平均270〜280ヤードと、しっかりとした飛距離をもった選手ばかりであった。
杉山知靖も、そのひとりである。平均飛距離280ヤード。しかも2013年の日本アマでランナーアップと実績もある。決勝で大堀裕次郎に敗退したのだった。「はい、いろんな方に応援やサポートをしていただいているので、感謝の気持ちを結果で返したいです。(振り返れば)あの日はドライバーショットの調子が悪かったので、(あれ以来)しっかりフェアウェイをキープし、コントロールできるようにして、飛距離も少し伸びましたし、大きくゴルフの内容も変わりました。部活のトレーニングが充実しているので。トレーナーが3人いて、それぞれ体幹、体のケアと分担が違っていて、体幹を鍛えるメニューは選手個々によってプログラムされています。すごい充実しています」と元気いっぱいだ。「今日のゴルフは、ほぼ完璧です。ティショットでラフに入ってもフライヤーをしっかり計算して、それがいい結果につながりました」。
杉山は、1〜4番までをうまくパーで切り抜けて、5、7番とバーディを奪い、さらに10、16番もバーディとした。ボギーは、12番だけ。手堅い攻防だったといえる。「(優勝目指して)ベストを尽くしたいです。廣野は難しいです。小野は得意なので。狭いのでラフに入れないように、しっかりフェアウェイをキープしないとパーをとれない。そのへんをちゃんとわきまえたゴルフをしたいと思っています」
現在、中央学院大学4年生。愛読書のひとつに中部銀次郎の著書をあげる。それは杉山の父親がゴルフ好きで、しかも中部銀次郎の大ファンだった。「で、僕に中部さんの著書を全部買い込んでくれたんですよ」というエピソードがある。この廣野は、中部のゴルフの故郷だ。そんな中で、中部イズムを継承しようとしている杉山が、どんなゴルフを見せてくれるか楽しみである。
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