第100回大会の本年は、廣野ゴルフ倶楽部と小野ゴルフ倶楽部という日本を代表するコースでストロークプレーが行われた。人手で造成されたフェアウェイ、大きく生長した樹木、要所に配されたハザード。そしてトッププロも悩ませた難グリーン。この2コースはショートゲームの技術を出場選手に要求する。この2日間、見事なショットとパッティング技術を見せた富本虎希と金谷拓実が上位でマッチプレー進出を決めたのも、彼らが持つショートゲームの技を存分に発揮できたからだろう。
九州アマチュアゴルフ選手権で9位タイに入り、初の日本アマ出場を決めた富本は、廣野ゴルフ倶楽部での第1ラウンドをイーブンパーで凌ぎ27位タイで小野
ゴルフ倶楽部での第2ラウンドに臨んだ。スタートの10番、いきなり130ヤードのセカンドショットをピッチングウェッジで2メートルにつけると、11番(パー5)も連続バーディ。これで波に乗った富本は、14番で5メートルのスライスラインを読み切ると、17番(パー3)では4番アイアンでのティーショットを3メートルにつけて、前半で4つスコアを伸ばす。「前半で4つ貯金が出来たので、後半はパープレーでも良いかと」と心に余裕が出来た富本の勢いは後半に入っても止まらない。2番で6メートルのスライスラインを決めて、5つ目のバーディを奪った。5番では3パットのミスでこの日初ボギーを叩いたが、直後の6番で再び130ヤードの2打目をピッチングウェッジであわやチップイン・イーグルのスーパーショットでスコアを戻す。最終9番は小野ゴルフ倶楽部のグリーンにてこずり、ボギーを叩いたが、6バーディ・4ボギーの68で通算4アンダーパーの4位タイでマッチプレー進出を果たした。「今日は17ホールでパーオン。ティーショットは全ホールがフェアウェイをヒットしました」と淡々と語る富本。ショットメーカーぶりを存分に発揮しての好スコアだが、実は第1ラウンドでの廣野ゴルフ倶楽部をパープレーで凌いだことが、今日の出来に繋がったという。「自分はドライバーショットも飛距離が出る方ではありませんし、距離が長い廣野はスコアメイクに苦しむかと覚悟していました。それがパープレーで終えられて、距離の短い小野ゴルフ倶楽部ならスコアが出せるのではと思いました」と涼しい顔。富本は地元沖縄の興南高校2年生。現在プロとして活躍する宮里美香や富村真治を輩出した強豪校で腕を磨く日々。これまでのタイトルは九州中学校選手権にとどまっているが、名選手を生み出してきた沖縄から、また一人将来が楽しみな選手が現れた2日間だった。
「ティーショットの狙いどころが狭い小野ゴルフ倶楽部ですから、得意のパッティングでどれだけ凌げるかが勝負」と首位タイで小野に乗り込んできた金谷拓実は言う。2度目のマッチプレー進出をかけた第2ラウンドは、10番からスコアカード通りのプレーで前半をイーブンパーで終えるも、金谷は落ち着き払っていた。「不安だったティーショットは良かったですし、気をつけていたので、しっかりとフェアウェイを捉えることが出来ました」とスコアを伸ばせずに終わった前半も、「慌てず、急がず」と落ち着いてプレーが出来たという。後半に入って2、3番の連続バーディも、決して浮かれることなく淡々とプレーを続ける金谷。7番で3パットのミスからこの日唯一のボギーを叩いても、直後の8番で下り3メートルのスライスラインをねじ込んで、すぐにバーディを奪ってみせた。終始、安定した心でプレーした金谷はこの日3バーディ・1ボギーの70で通算5アンダーパーは、メダリストの阿久津と村山と2打差の3位という好成績につながった。「マッチプレーは、やっぱりいつもと違いますよね。目の前の相手との勝負に集中するのですから、楽しみです」と、ピンチにもチャンスにも心に波風を立てない金谷は、ベスト16を目標にしているという。「パットがカギを握ると思います」不敵な笑顔を見せる金谷が、本選手権の台風の目になれるか。
|