村山駿は廣野ゴルフ倶楽部での第1ラウンドを70で終え首位と1打差の7位タイで、「自分はこのコースの方が好き」という小野ゴルフ倶楽部での第2ラウンドをスタートした。10番からティーオフした村山は、11番でバーディを奪う幸先の良い出だしも、13番で2打目をグリーンオーバーさせてボギーを叩いてしまう。しかし、4番で残り100ヤードのセカンドショットをウェッジで1メートルにつけてバーディを奪い返し「ボギーのすぐ後にバーディを獲れて、気持ちも乗りました」と15番で140ヤードをピッチングウェッジで30センチ、16番(パー5)も2オンで、見事に3連続バーディを決めた。18番では左バンカーからの140ヤード
の2打目を1メートルにつけ、前半で4つスコアを伸ばす。後半3番から連続ボギーで勢いが止まったかと思われたが、6、7番の連続バーディで帳消しにすると、最終9番もバーディフィニッシュ。8バーディ・3ボギーの67でホールアウトし、通算7アンダーパーで廣野ゴルフ倶楽部で64をマークし、23年ぶりにアマチュアコースレコードを更新した阿久津とともに、第100回大会のメダリストを獲得した。
それでも、ホールアウト後の村山は、普段の飄々とした表情を崩さない。「この2日間ショットの調子が良いので、ピンチらしいピンチもなく、焦らずにプレーできました」とこの2日間を淡々と振り返る。村山が一躍注目を集めたのは、2013年の日本学生ゴルフ選手権。首位と5打差をつけられた最終ラウンドに65をマークした村山は大逆転で初の全国タイトルを手にした。初優勝の嬉しさよりも困惑した表情を見せていた村山だが、タイトルホルダーとなった瞬間から、村山には苦悩が忍び寄っていたのかもしれない。学生チャンピオンという重みが、いつしかプレッシャーとなり、その後の村山は優勝争いに加わることが出来ない試合が多くなる。ショットの調子も崩し、昨年の日本アマではマッチプレー進出もならず、連覇の期待がかかった日本学生も28位タイと低調に終わった。
苦しんだこの2年、愚直に練習を重ねてきた村山は、「技術的にはクラブフェイスに球を乗せる打ち方を習得できて、アイアンショットが良くなった」と、手ごたえを掴んでメダリストを獲得するまで復調してきた。もう一つ、村山を支えたのはトレーナーの存在。「体のケアをしていただいているのですが、何でも相談に乗ってくれる方なんです。自分らしく淡々とプレーしなさいと言っていただいて。そのためにルーティンを決めてとアドバイスをいただいて。それで、気持ちも落ち着いてプレーできるようになりました。本当にトレーナーのお蔭です」と、感謝の言葉は尽きない。2013年に村山が大逆転優勝を果たしたのは加古川ゴルフ倶楽部が舞台となった日本学生ゴルフ選手権。第100回大会が開催されている廣野ゴルフ倶楽部と小野ゴルフ倶楽部とは、ほど近いところにある。全国タイトルを勝ち取った喜びと苦難の扉が開いた関西の地で、村山は2つ目の全国タイトル獲得で成長した自分の姿をトレーナーにも見せたいところだろう。
そしてもう一人、成長した自分を見せたい人がいる。「今年は六甲国際で開催ですよね。自分は江連忠さんにゴルフを教えてもらっていたので、どうしても六甲国際の日本オープンに出場したいんです。そのためには、日本アマのタイトルを獲るしかない。だから、頑張りたいです」物柔らかな表情に隠された日本アマ優勝への熱情は、その言葉の一瞬の真剣なまなざしで十分に感じさせられた。
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