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Championship Reports
競技報告
【勝者の金谷、敗れた中島、両者の目には涙が浮かんだ】
第6日 競技報告:三田村昌鳳 写真:Y.Watanabe
金谷拓実
戦い終えてキャディバッグのチェックに行く途中、中島啓太は、急に涙ぐんだ。自分らしいゴルフが、思うようにできなかった悔しさでいっぱいだった。それも、36ホール・マッチの戦いで、あと9ホールも残して勝負がついてしまう大差での敗退に、ショックを隠せなかった。親族や関係者に挨拶が終わると、急に、涙が溢れてきたのだ。帽子のツバを指で深く下ろして、顔を隠しても、涙は隠し切れないほど悔しさが残っていた。勝負は、金谷が10and9という大差で決着した。

「決勝だからといって、特別に緊張していたわけではないと思います。でも、自分のゴルフが全然組み立てられなかった……。そう思うとプレッシャーがあったのかな、
中島啓太
と」と中島はポツリと呟いた。
朝から、強い風が吹いている。青空が見えても、台風の影響なのか、突風、疾風が吹き荒れる。第100回大会の決勝戦。中島啓太は、15歳19日。そして金谷拓実は、17歳51日。どちらが勝っても2004年大会の李東桓の17歳92日の日本アマ史上最年少優勝記録を塗り替える戦いとなった。冷静沈着で、とても中学生とは思えないと本選手権で中島と対戦した選手たちは、口をそろえていう。その中島が、決勝戦では、前半18ホールから圧倒されて、奪取したホールが、わずかに2ホール。ハーフと分けに持ち込めたホールが、6ホール。つまり1、2番から始まって落としたホールが、10ホールあった。さらに19ホールへと駒を進めた後半でも奪取するホールが目立たない。

19ホール目、金谷がまた奪って9up。中島は21ホールで獲り返したものの22ホールでまた奪われて9upに戻された。27ホール目(9番)には、このホールを金谷が獲れば決着がついてしまう。
強い、時折突風になるような風に翻弄されたのは中島だった。それでなくても連戦だ。予選が36ホールのストロークプレー。目標は、この予選を突破することだった。そして翌日1回戦。さらに2、3回戦を1日で消化。そして準々決勝、準決勝も午前・午後で消化しなければいけない。昨日の準決勝の後半は、脚がパンパンに張り詰めて思うようなスウィングができなかったという。そして決勝は、36ホールのマッチプレーだ。敗因を聞くと「まずは体力的に劣っていること。そして風に負けました」と本音を語っている。優勝した金谷とは、2歳差である。成長期の2年の差は、体力的、特に持久力的にはかなり違ってくるのだろう。

その金谷が、ゲームの流れを振り返る。最初の9ホールを終えて2upとした金谷が「流れを相手に渡さずに済んだのは、次の10番だったと思います」と語った。10番、パー4で、中島は2メートルのバーディチャンス。金谷は、2オンしたものの8メートルの距離。最初に金谷が打った。それが見事に沈んでバーディ。逆に、中島が2メートルのチャンスを外して、このホールを奪って3upとした。中島は、そのまま前半の残り9ホールを、ひとつも奪い返すことができなかった。「(強風で)ショットが持っていかれたり、読み違いでミスすることもありました。グリーン上は怖かったです。ホールによってはボールが動きそうな風もありましたから」と翻弄した心の内を話した。

金谷が、8upで19ホール目(1番)に進んだ。そこで金谷がイーグルを出して9upとした。「(試合中)ドライバーをできるだけフェアウェイから外さないようにと心がけていたのですけど、それがほぼ思い通りにできました。外したホールは、2、3ホールあったかどうか。で、この1番で、フェアウェイ真ん中。アゲインストの風でも結構飛んでいたんです。残り240ヤードを3番ウッドで打って、2メートルにつけました。それを入れてイーグル。これで、なんとかなるかな」と思ったという。でも「思った途端に、ちょっと(気が)抜けました。だから3番(21H目)もとられたけど、すぐにもういちど気を引き締めて取り返しました」と言った。

金谷が得意とするのは、ショートゲームやパッティングだ。特にパッティングでは、毎日かかさずに1時間、自宅で練習している秘策があった。「パターのフェースのちょうど芯部分を中心に左右2センチほどの間隔を開けて、爪楊枝を縦にして、ガムテープで止めるんです。ボールの芯とパターの芯に当たれば、爪楊枝は邪魔になりませんからね。その練習を、中学に入ってから毎日しています」と語った。誰に教わったの?と聞くと「確か、どこかのゴルフ雑誌に載ってたんだと思う(笑)」と屈託ない笑顔を見せた。

勝負は、27ホール目(後半9番)で決まった。金谷もまた「まさかここまでこられるとは」と思っていたというが、昨年大会では、今大会3回戦で勝った高校の先輩・長谷川祥平に敗れてベスト16まで来ていた実績がある。
金谷の自宅は、広島の呉市である。そこから高校までバスで1時間半かかる。早朝練習が7時ごろからだと、どうしてもバスだと時間がかかる。だから、送迎は母親の運転で通っている。表彰式の挨拶で「母親に感謝したい」とスピーチしたのは、日々のこうした応援のお礼でもあった。

歴代日本アマチュア選手権の歴代チャンピオンの100人目(延べ)が決まった。トロフィーに刻まれるのは、「2015 Takumi Kanaya」である。1907年から始まった日本アマチュアゴルフ選手権。第100回の勝者が、NEXT100年へと継承してくれる17歳51日の少年であるということに、未来の日本のゴルフ界の光明を見出したい。


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