最終ラウンド最終組での直接対決。金谷拓実には、東北福祉大学の先輩・池田勇太に並ぶチャンスが再三あった。池田の乱れで、トップの位置が勝手に近づいてきていた。スタートの5打差は、前半の9ホールを終えたところで1打差に詰まっていた。
スタート前の金谷は、優勝など意識していなかった。「5打差もあるし、勇太さんはずっと調子がよさそうだったから、順位のことより“今日は、とにかく自分のゴルフをやりきろう”と、それだけでした」と語る。フェアウェイをはずさないティーショット、グリーンを確実にとらえるフェアウェイウッド、ユーティリティー、アイアン全てのクラブを駆使してのショット。それらの安定性は、明らかに池
田を凌駕していた。そして、3バーディももたらしてくれていた。
それが、9ホールを終えて1打差にまで迫ると、優勝の2文字が頭の中にちらつき始め、11番(パー4)では、第2打を2メートルと絶好の位置につけながら決められず、12番では3パットと微妙にリズムを乱した。これで3打差と、池田にリードを広げられた。
ところが、試合の流れは、さらに変化し続ける。15番で池田が、この日2発目のOB。1パットのボギーに切り抜けたが、このホール金谷はバーディを奪って、再び1打差に。続く16番でも波乱があった。池田のティーショットは左サイドのバンカーに。そこからレイアップしての3打目は、ピンを7メートルもショートさせた。対して金谷はピン右7メートルほどに、しっかり2オンさせていた。池田がはずし、金谷が決めれば一気に逆転…という状況だった。結果は―。池田はパーパットを外した。金谷はバーディパットを決められなかった。ファーストパットを1.5メートルほどオーバーさせ、返しのパーパットも外す3パットのボギーで、1打差は変わらなかった。
17番でも、金谷は絶好のチャンスにつけた。右横3メートル。池田はグリーン右手前のラフから1.5メートルに3オン。ここでも、並ぶか逆転するかのチャンスだったが、金谷のバーディパットは、ラインをはずれていった。そして、1打差のままで最終ホールを終えることになった。
「いい経験をしたとは思いますけど、やっぱり悔しい気持ちの方が強い。特に1打差になってからの16、17番のパッティングには、悔いが残ります。あれだけの緊張の中でのパッティング経験は初めてで、その状況での自分がどうなるのかわかっていませんでした。これからは、今日の16、17番での状況でのパッティングを意識して練習します。新しい自分の発見でしたから…」
自分のゴルフには徹したが、そこに別の自分が現れることまでは、予想もしていないし、未知の世界であった。金谷は、2位に敗れて新たな課題を見つけた。
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