1番からの9ホールで3バーディ。イーブンパーからスタートした稲森は「ちょっといい気分でプレーを進めていた」。それが、後半に入って急転する。11番をボギーにした後の13番だった。ドライバーショットは、いつもの稲森らしく、しっかりとフェアウェイをとらえていた。第2打で手にしたのは3番ユーティリティだったのだが、アドレスに入る前に迷った。「右からいくか、左から乗せていくか、それともピンを直線的に狙うか…。決断できないまま、宙ぶらりんな気持ちで打ってしまったんです」という結果は、「ものすごいヒールボールで右に飛び出して池ポチャでした」と稲森に苦笑いを浮かべさせることになった。ドロップしての第4打も寄ら
ず、パッティングも決まらずで、ダブルボギーになってしまった。
「何やってんだ!と自分に腹が立ち、カチンときました」
この“カチン”は、着火音でもあったようだ。闘志に火がついた。続く14番(パー5)をバーディでバウンスバックすると、さらに15、17、18番と攻め続け、ショットをピンに寄せてバーディを重ねていった。火がついてからは、5ホールで4バーディ。一気に通算7アンダーパーまでスコアを伸ばしてのホールアウトとなった。
攻めのゴルフは、ちょっと稲森らしくない印象があるが、火がついたことで残る2日間のゴルフへのスタンスも決まった。「ここはフェアウェイが広いので、自分にそれほど大きなアドバンテージはないと思います。でも、フェアウェイのどちらサイドに置いておかなければいけないのかは考えさせられます。そこは、自分のゴルフスタイルを生かせるところだと思います。その上で、グリーンを狙うショットは攻めまくろうと思います。攻めて、攻めて、攻め抜いていった人が勝つ試合だ。自分は、そう感じたので、この試合は、感じたままのことをやり続けます」
ステディーなゴルフを身上とする稲森だが、着火したままの気持ちで戦い抜くことを自分に言い聞かせていた。
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