16歳という若さQTを受験したが3rdステージで落ちた。翌2012年の関西ジュニアで優勝し、日本オープンに初出場している。そしてプロテスト合格は18歳で、2位タイで通過した。それもプレ予選会から這い上がって合格である。
「(QTでは)1打、足りなかったんです。そのときずいぶん落ち込んだんですけど、その経験が、いま生かされていると思います」プレ予選からの受験は大変だったのか?と質問すると「いや、僕にとっては良かったです。いろんなコースで戦えるし、試合勘もどんどん養われるし、ここまで這い上がってこられたという自信にも繋がりましたからね」と、まだあどけなさが残る表情で語っていた。
その鍋谷太一の
本選手権出場は、ウエイティングリストからだった。「ひょっとしたら枠があるかも知れない。ですからウエイティングでも、しっかりと練習ラウンドしました。そしたら出られるということになって、急遽、宿の手配とかいろいろ大変でしたけど、やっぱりこの大会に出られるのは嬉しいですからね」と言う。なんとホテルは、伊勢原方面で、横浜カントリークラブまでは、車で1時間はしっかりとかかる。「土地勘がよく解らなくて、グーグルで調べたら、そんなに距離はないと思ってとったんですけど……」と語るのは、今回、キャディを努めている父親の鍋谷忠治(ティーチングプロ)さんである。かつては二人三脚でずっとやっていたこともある。今年帯同するのは2試合目だった。東住吉区で「ゴルフフィールド」の練習場を経営していて「最初はマナーから教わりました」と父親に感謝の言葉を表している。
4、8番と、バーディ。そして13番でボギーとしたものの14、15番とバーディを奪い。18番、ボギーの69。通算7アンダーパー。首位と4打差の3位で最終ラウンドを迎える。
「満足ですね。いいプレーができたと思います。風もあったし、今日もかなり寒かったので飛距離もあまり出なかったとか、そういう部分もうまくジャッジできたと思います。総合的に75〜80点ぐらいのゴルフです。18番は、距離が(213ヤード)中途半端で、5番アイアンか4番アイアンと迷って、どっちやどっちや、4番でえーかーって(笑)。あそこがいちばん悔いが残るで、もう1回やり直したいですけど(笑)。それ以外は、ナイスプレーでした」
ともかく明るい。喋りだしたら止まらないほどだ。いや、おそらく今日は格別に興奮していたのだろう。この順位なのだから。
「(同じ20代の選手の活躍を見て)すごく刺激になっています。チャレンジツアーでも、ツアーの前半戦でも、一緒に回ったりとか、顔見知りばかりなんです。(星野)陸也は同級生だし。自分もいけるかも知れないと思わせてくれるのは嬉しいです。頑張ろうっていう気持ちにさせてくれます」と語る。
若くしてプロ入りした鍋谷は、決して順風満帆ではなかった。むしろ才能溢れるジュニアだった彼にとっては、はじめての挫折感を味わっていたのかも知れない。
「焦りは、めちゃくちゃありました。2014年にプロテスト受かって、その年にQTも通って、19歳でツアーの出場権を得て出られたんですからね。そのときは、正直言ってゴルフをナメてました。まあ、いけるやろ、と思っていたら、ところがどっこい。予選落ちばかり。「自分は、滅茶苦茶下手くそやないか」って思いました」と言った。そして「3回ぐらい、(ツアー選手として)ダメなんじゃないかと思いました。僕は、最初のQTから6年目なんです。16歳からなんで、22歳の今で6年間過ぎたんですよ。焦りはありましたけど、いまは、あれこれ考えずにプレーに専念しよう。眼の前の1打に集中しようという感じです」
鍋谷は、いまは早く活躍したいという気持ちをうまく飲み込みながら、ゆったりとプレーできているという。
明日、最終ラウンドは?と聞くと「ゆっくり味わってお茶でも飲みながら楽しみたいという気持ちが大きいです」と語った。そのワンテンポの余裕は、苦しんだこの6年で得たゲームの幅なのかも知れない。
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