前日の閃きに間違いはなかった。13番を池に打ち込んでダブルボギーにしたところから「カチンときて、攻めまくった」結果は、5ホールで4バーディ奪取になった。このことが、稲森に閃きを呼んだのだった。それは「攻めて、攻めて、攻め切った選手が優勝する大会じゃないか…」というものだった。
その思いは、第3ラウンドのプレーに現れていた。スタートの1番ホール。ドライバーショトを稲森にとっての決まり事のようにフェアウェイにヒットさせると、第2打をピン一直線に打ち出した。グリーンに落ちたボールは、数メートル転がってピンに当たった。カップインにはならなかったが、縁に止まってタップインのバーディとなった。
フ
ェアウェイキープ率ナンバーワンの稲森だ。いつもグリーンを狙いやすいポジションから打っている印象がある。パーオン率も高い(4位)。大きなうねり、きつい傾斜。ホールロケーションによって、狙いどころを絞り込み、正確なコントロールで打っていかなければならない。といって、安全なエリアは、ほとんどなく、広いエリアに乗せておけばいい…といったショットは、ピンからどんどん離れていってしまったり、最悪はグリーンから転がり落ちてしまうこともある。そういうコースだからこそ、勇気をもってピンを攻めることが大切で、稲森には、その攻めをスコアメイクに直結させられる技術と好調さがある。
10番までに4バーディを奪って通算11アンダーパー。13番では、グリーン手前から左サイドに回り込む池に落としたが、これも攻めた結果で、「攻めるには、リスクを負わなければならないこともあるので、結果を受け入れる勇気も必要」と達観していた。気持ちは、攻めのままだ。そして、すぐに連続バーディでバウンスバックする。
2位に3打差で最終ラウンドを迎えることになった。プロ初優勝が、日本オープンというビッグタイトルになるのだろうか。「絶好のチャンスなので、それを実現させたいですね。ひるまず、恐れず、攻め抜く。自分は、後半の2ラウンドは、それを貫くと決めています。閃きが勘違いであってほしくないです」
ショット精度の高さと、攻め抜く強い気持ち。稲森の今大会のゴルフに迷いはない。
|