11時10分。第4ラウンドのプレーが中止となり、54ホールで決着と決まったとき、出利葉太一郎(いでりは・たいちろう)は、とても悔しそうな表情を顕にした。流れは、出利葉に傾きかけていると本人は、感じていた。
「この4日間の中で、今日はスタートからいちばんいい感じで行けたんです。ショットもリズムもよかったんで(中止は)正直言って悔しいです」と本音を吐いた。2番、パー4でボギーのあと5番、パー5ではイーグルチャンスにつけてからのバーディ。さあ、これからだ、というときに中断のサイレンが鳴り響いた。
「確かに、一度は出場できない(関東アマ2次予選落ち)と思っていたものが、2019年日本アマ上
位10以内のシードで出られたわけですから、それが優勝争いまでこれたということでは、とても満足していますし、後半のラウンドで(憧れの)中島啓太さんと一緒に回れて、いろいろ勉強になったし、話しかけてもくれたことも、嬉しいです。でも、やっぱりタイトルを獲りたかったという思いは強いですね」と語った。
出利葉は、九州・福岡出身で、プロの時松隆光とジュニア時代から親しい。指導を受けているのも同じ篠塚武久氏。そしてベースボールグリップをずっと続けている選手だ。父親も九州アマに息子と一緒に出場したことがあるほどの腕前だ。
出利葉の目標とする人の欄に「イチロー」「小平奈緒」という2人のアスリートの名前が書かれている。理由は「ふたりとも、人間力のある人でしょう。ユーチューブでしか見ていなかったんですけど、そういうアスリートになりたいという気持ちがあったので、そう書きました」と言った。
日本大学ゴルフ部の外部コーチに、内藤雄士プロがいる。最近では、週一回のペースでスウィングチェックをしてもらっている。ほかにも杉浦悠太、古川龍之介、新村駿などレギュラー選手たちをチェックしている。「アライメントのズレをチェックして治す方法など教えてもらって、とても参考になりました」と、本選手権の直前も見てもらったという。
「8月からは、関東学生、日本学生、そして日本オープンなどに出る予定です」という出利葉選手。この悔しさが、きっとバネになるはずだ。
|