まさかの競技中止の報だった。9番ホールのセカンド地点でこの日、雷雲接近のために2度目の競技中断のサイレンが鳴り、クラブハウスに引き上げた出利葉太一郎(日本大3年)は、プレーが再開されるものと思っていた。スタート時点で首位の宇喜多飛翔とは5打差があったが、中断になった時点では4打差と詰めていた。「自分自身のゴルフの内容も良かったですし、宇喜多選手も粘っていた、ゲームの内容としては面白い展開でチャンスはある」と信じていた。「これまで取り組んできたことが数字とか成績にあらわれてきた」と
ころだけに、思わぬ結末に戸惑っていた。
「中止になるとは…中断はあると思っていた。さすがにびっくりしていま
す。まだ気持ちの整理というか…悔しいというか、まだよくわからない」とロッカールーム内で語った。昨年の日本アマチュアゴルフ選手権では、首位の中島啓太を追っていた彼は、やはり降雨によるコースコンディション不良のため第4ラウンドが中止になり、54ホール短縮になって2位に終わっていた。2年連続の不運というか、本人も「運命的ものがある。同じような状況で中止になるとは」となんとも言えない巡り合わせだ。
「はやく勝ちきれる選手になりたい。もっともっと成長していきたい」という。2週間前に大学の先輩である堀川未来夢が日本プロゴルフ選手権で「勝ちきる」シーンを目の当たりにした。会場は母校の三島にあるグランフィールズカントリークラブで、最終日に応援に行った。「第2の故郷で、地元の応援を力にかえるのもすごいですし、応援の中ですごいプレーをされていた。人間的にも素晴らしい人です」と大きな刺激を受けた。「強い人が勝つのではなく、勝つ人が強い。そういう選手を目指したい。
自分もいずれは同じフィールドで戦いたい。そのためにあと1年半、いろんなことを吸収して、もっともっと強い選手になりたい」と「強い」「勝ちきる」という言葉を何度も口にした。そこに彼の悔しさが表れている。
しかし、大学3年生の彼には、まだこれからの可能性と道が開けている。
|