第2ラウンドを終了した時点で通算5アンダーパーとし、首位の大嶋港(関西高校3年)と2打差の2位タイにつけた武田紘太(生光学園高校1年)は、虎視眈々と「これはいけるかもしれない」と思っていた。
そして迎えた最終ラウンド、前半9ホールを終え、1バーディ・2ボギーの37とボギーが先行する苦しいプレーだったが、大嶋も前半2つスコアを落とし、この時点でその差は1打差に縮まっていた。
「後半最初の10番でバーディがきたのに、次の11番でエッジから3パットしてしまって……」。10番(パー3)で武田がバーディを奪って通算5アンダーパーで2人のスコアが並ぶも、11番(パー4)で武田がボギー、大嶋はバ
ーディを奪って大嶋が2打リード。さらに13番(パー4)で大嶋がバーディを決めて、その差は3打に広がった。
流れが大嶋に傾きかけたが、続く14番(パー5)で武田がきっちりとバーディを奪って再びの2打差。
15番(パー4)は互いにパーをセーブした後の16番(パー3)で大嶋がボギー。
続く17番(パー4)で武田はバーディを決め、通算6アンダーパーで首位を並走して最終ホールへ。
勝負の最終ホール、武田のセカンドショットはグリーン右手前の池へ、大嶋はグリーン右サイドのバンカー。武田の第3打はピンまで2メートル、大嶋のバンカーショットはピンまで1メートルにつけた。ここで、武田が先にボギーパットを決め、大嶋のパーパットを待っていた。
「自分は長いボギーパットを決めて、大嶋さんがパーパットを外してプレーオフになったので、流れは自分にあると感じました」。
最終ホールを終えて、武田と大嶋が通算5アンダーパー。勝負は、この日のベストスコア66でホールアウトした髙田圭一郎を含めた3人のプレーオフにもつれ込んだ。
プレーオフ1ホール目、武田と大嶋がともにパーをセーブ。ダブルボギーの髙田が脱落し、勝負は2人に絞られ、2ホール目へ突入した。
「大嶋さんがティーショットを左に曲げて、気持ちの余裕ができました」。その言葉通り、武田はティーショットをフェアウエイセンターに運び、そこからピンまで約1メートルの位置に2オン。見事にバーディパットを沈め、日本ジュニアチャンピオンの栄冠に輝いた。
表彰式後のインタビューに「とても嬉しいです」と答える武田だったが、その表情はとても冷静に見えた。
“1年生優勝”と聞くと『プレッシャーがないからイケイケでプレーできるのでは?!』というイメージが強いが、武田は全く違っていた。その場の感情に流されることなく、徹底して自分の持ち味やプレースタイルを曲げない芯の強さと、試合全体の流れを俯瞰で捉えられる能力を併せ持っていた。1年生とは思えない戦いぶりだった。
そんな武田も、プレーオフ2ホール目のバーディパットを沈めた瞬間は「体の中から喜びが込み上げてきて、思わずガッツポーズが出ました」と感情を露わにした。
|