前任のグリーンキーパーが退職し、コースから「替わりを務めてくれないか」といわれたのは1988年のこと。門脇さんは「とてもじゃないけどできない」と断った。しかし1、2年だけだからと押し切られて始め、はや12年が経った。
門脇さんの芝の管理のキャリアはこれが最初ではない。八戸カントリークラブの開場(1974年)が間近にさしかかった頃、門脇さんは同CC従業員の誘いで芝張りを手伝った。これが最初の仕事で、以降も作業を続けることになった。だから実際のところは25年も芝の管理を担当しているベテランである。
「大変でしたよ。子どもは祖母にあずけっぱなしでしたし、芝の管理は素人ですから見よう見まねで覚えました。前任のキーパーがやめて次の年の春は、フェアーウェーの芝が芽吹かずあわててオーバーシードしたり、去年は灌漑もあった。その前の年はカラスがコガネムシの幼虫を捕るのにフェアーウェーに穴をあけて……。この仕事を続けて良かったと思ったことですか?あまりありませんねぇ」と門脇さんは笑うが、お客さんに「グリーンがよかった」と言われるとホッと安堵できる。
「ずぶの素人で始めたので、同僚やコースに出入りする業者さんらに協力してもらいました」と言う門脇さん。これからグリーンキーパーやコース管理をやってみたいという女性に何かメッセージはありますか、と聞くと門脇さんはこう言う。
「ある程度男性と同じように作業ができれば、男だからとか女だからとか、気にすることはないと思います。グリーンの散水など、昔は手作業だったことも今では機械でできます。グリーンの状態にしても、毎日見ていれば『あれ、病気かな』って、経験で分かるようになります。大切なのは、もちろん芝に興味を持つことと、コースを愛することだと思います。あとは家族の理解です。土日もやらなきゃいけない仕事ですから」。
女性には母性本能というものがある。それをゴルフ場の芝や木々に傾けてやれば、男性キーパーに勝るとも劣らないコースを造り上げることができる。 |