吉川 |
もう少し、テーマを絞って話を進めたいと思います。まず最初に、コース選定、コースセッティングについてはどのように皆さんお考えですか? |
大橋 |
基本的には、どのコースでも同じコンセプトでやりたいと考えています。私は競技委員長として大洗、小樽、鷹之台、そして今年の東京とコースセッティングを行ってきましたが、どのコースとも理事長をはじめメンバーの方々が非常に協力的で頭が下がりました。ただ、コース側としてはアンダーパーが多く出ることがコースのよし悪しに結びつくとの思いが強く……。従って100%我々の目標とするコースセッティングにすることは難しい。我々としてはどのコースも、同じコンセプトのもとでコースセッティングを行っています。終ってみれば、どのコースの方々も“良いセッティングだったね”と言ってくれるんですがね。普段プレーしているメンバーたちは、ラフの長さが8センチ以上になり、グリーンのコンパクションとスピードが通常とは違うことは理解されないです。 |
川田 |
95年の霞ケ関は、メンバーたちは久しぶりの大舞台なので、コースセッティングについて興味津々でした。“この前は14アンダーだったが、今度はクラブやボールが進化したから17、18アンダーになってしまうな”と、比べたのがカナダカップですよ。それで、コースセッティングが始まれば“川田がフェアーウェーを広げた”などと騒ぎになる。心配になったキャプテンに呼びだされましたが、きっぱりと“思った通りであれば4アンダー。でも雨や風があれば増えても2つ3つですね”と答えました。 |
尾関 |
“良いスコアなのはコースが悪いからだと言われたくない”という感情があるんですよね。 |
川田 |
ここ数年は、パー71というセッティングが多くなってきてますが、これもまだコース側としては抵抗を感じるようですね。パーは72という既成概念が支配している感があります。また、コースレートについても日本は独特の考え方ですよね。 |
尾関 |
そう、日本では“コースレートが高ければ良いコース”という解釈になってしまっている。 |
大橋 |
でも、本当はそうじゃない。あくまでも、フェアなセッティングこそが、日本オープンで一番重要な要素だと思います。一部の選手たちだけが苦しんで、他の選手たちが楽にプレーできたというのは絶対に避けたい。 |
吉川 |
JGAとしては、どのくらいの優勝スコアをイメージしてコースセッティングしているのですか? |
大橋 |
まあ、5アンダーぐらいが面白いゲーム展開になると思いますが、コースによって距離と難易度が異なるので、スコアにはこだわっていません。 |
川田 |
私個人としては、4日間で280ストロークぐらいが面白い展開になると考えています。平均すれば70を4日間続ける。もちろん2日間は60台が出るだろうし、後の2日間はできるだけオーバーパーにならないように我慢するラウンド。チャンピオンシップを争ううえで、最も理想的だと私は思っています。 |
戸張 |
全米オープンで、USGAに話を聞くと、やっぱりパーの数字にはこだわっていません。普段パー72のコースをパー70に設定することもある。あくまでもフェアな設定を施し、一番ホットなプレーヤーがベストなプレーをして、イーブンパーになるのがベストと考えているようです。その思惑をはるかに超えるプレーをしたのが、タイガー・ウッズということです。 |
尾関 |
1997年の全米オープンの舞台となったコングレッショナルは難しかった。あれを見てしまうと日本オープンが難しいとは言えないと思いました。 |
川田 |
日本はまだフェアーウェーが狭いね。でも、それを正当化するならば、アメリカやイギリスでは“このホールは右にはずしたら、絶対に寄らないとか、絶対に手前に刻まなければダメだ”というコンセプトでグリーン回りがデザインされている。だから事実フェアーウェーのどこからグリーンを狙うかが大事になる。ところが日本のコースはフェアーウェーのどこから打っても、またグリーンをどこに外しても何とかなる。だからフェアーウェーを狭くせざるを得ないわけです。日本は根本的に、コース自体が欧米に比べるとやさしいと思います。 |
吉川 |
コースセッティングに、大きく影響するのが天候の問題だと思います。特に今年の日本女子オープンは、悪条件も重なって14オーバーというスコアになってしまいましたが、こちらについては皆さんはどのようにお考えですか? |
川田 |
自然の条件ですから、いかにミニマムにするか配慮すべきだったと思います。 |
大橋 |
それがコースの特徴ですから、通常の状態でのセッティングをしたら、たまたまそのようなスコアになってしまったという感じですね。プレーする条件は悪かったと思いますね。 |
川田 |
結局はコース選定後のコースサイドとのコミュニケーションが重要だと思います。倶楽部側のメンバーの理解も得て、リクエストすることはする。もちろん逆に倶楽部側のリクエストに応じることは応じる。開催コースは5年前から決まっているので、競技当日にベストなコンディションに持っていけるよう、選ばれたコースには充分な研究と試行錯誤が必要だと思います。この点はコース側に充分ご認識いただきたい点です。長い時間をかけて、互いに“良いオープンにしたい”という共通の理念の元に、時にはぶつかり合うことも必要だと思う。これも良いセッティングをするために不可欠な要素です。今年の女子オープンの場合、この議論がやや不足してしまったのかもしれませんね。 |