2004 MAY vol.75
既存ゴルファーの活性化が目下の優先課題
 ゴルフ産業の活性化を実現するうえのポイントは、大きく分けて以下の3つに分けられる。

【1.シニアゴルファーのリタイアを少なくする】
 ゴルフ市場高成長の原動力となってきた「団塊の世代」も既に50代半ば。この世代は今後定年退職によるビジネスリタイア期を迎え、それに伴いゴルフリタイアも懸念される。その影響を大きく受けるゴルフ産業界は、シニア層が定年退職後もゴルフを継続できる環境を整備することが急務。ゴルフは高齢になっても楽しむことができるスポーツなので、シニアの健康維持・増進と結びつけたサービスを付加するなど、新たな発想による取り組みが求められる。

【2.ミドル層ゴルファーの活動率と女性層のゴルフ参加率を高める】

 かつてゴルフ人口の中核を占めていた30代、40代の層で参加率と活動率の低下が顕著になっている。この世代は今後長期的にゴルフ産業を支え、ゴルフ人口とゴルフ産業の拡大を図るための最も重要な顧客層。その特徴としてあげられるのが、家族を基盤とした活動と、購買意思の決定に対する女性の影響力の強さである。したがって、新たな需要を拡大するためには、既存の「男性中心のゴルフ様式」からの脱皮と、女性と家族が参加して楽しめる、地域社会密着型の新しいゴルフの創造と提案が必要となる。

【3.ジュニア層対策の強化】
 長期的な視点からゴルフ産業の活性化を考えると、ジュニア層対策も重要な課題となる。現在10代のゴルフに対する関心はかなり低いが、その背景には他のスポーツに比べ、身近にゴルフと触れ合う機会が少なく、また費用が高いといった環境の悪さがあると思われる。一方、保護者が行っているスポーツはゴルフが一番なので、子供達が参加しやすい環境を醸成すれば、ジュニアの参加率を上昇させることは可能であると予想される。それには学校教育の場にゴルフを取り入れることや、費用面の軽減と支援を推進するため、ゴルフ関係者の一体となった施策の展開が必要となる。

 この世代別対策を考えるうえで大切なのは、短期的課題(すぐにやらなければいけないこと)と、中・長期的課題(時間をかけて取り組むこと)を見極めること。ゴルフ市場活性化行動計画検討会の座長を務める文教大学・国際学部の山田紘祥教授は報告書の中でこう述べている。
「短期的課題は、やはり既存ゴルファーの活動率の活性化ということ。30代から50代のコアゴルファー層で、ゴルフが好きでやりたくても仕事や収入の状況が厳しくてできないという人達です。彼らはかつてのゴルフブームの担い手。こうしたゴルファーがもっとゴルフができる環境を、ゴルフ業界が一致協力して創り出さなければなりません。そしてシニアゴルファー。会社の枠の中でゴルフの機会に恵まれて楽しんできた彼らも、定年退職とともに会社の切れ目がゴルフの切れ目になりかねません。そういうシニアゴルファーにもっと長くゴルフを続けてもらえるような対策が必要ではないでしょうか」。

検討会の座長を務める文教大学国際学部の山田紘祥教授
 また、山田教授は潜在ゴルファーや女性ゴルファーの開拓も、中期的課題として取り上げている。
「シニアやミドル層にもゴルフに関心を持つ層はまだまだ多い。こうした人たちがゴルフを楽しめる環境を作りださなければなりません。さらに言えば女性ゴルファー。統計的には女性ゴルフ人口は増えていません。増えたように見えるのは、景気がいい時にプレーの回数が増えているだけ。どんなレジャーでも同じですが、女性の参加が活発化すると男性の参加も増える。競馬はかつてその戦略でファンを増やしました。そして、この後に長期的課題としてジュニアをはじめとする新規ゴルファー開拓という課題があります」。
 近年、長期的課題である「ジュニアゴルファーの育成」は日本ジュニアゴルファー育成協議会の活動をはじめ、様々な場面で見られるようになった。今後は短期的課題である既存ゴルファーの活動率の活発化や、中期的課題である潜在ゴルファーや女性ゴルファーの開拓が、さらに必要となってくるだろう。
【ゴルフ市場活性化行動計画に関する検討会 名簿】
座長 文教大学 国際学部 教授 山田 紘祥
委員 日本スポーツマーケット研究所 所長 廣瀬 恒夫
日本経済新聞社 広告局 局次長 長谷川俊男
(財)日本ゴルフ協会 専務理事 大森  孝
(社)日本ゴルフ場事業協会 副理事長 手塚  寛
(社)日本ゴルフ場事業協会 専務理事 國分 勝弥
(社)日本パブリックゴルフ場事業協会 常任理事 宮崎 義浩
(社)日本ゴルフ用品協会 専務理事 河内 定男
(社)全日本ゴルフ練習場連盟 会長 内藤 裕義
経済産業省 商務情報政策局 サービス産業課 課長 熊谷  敬
経済産業省 商務情報政策局 サービス産業課 課長補佐 大原 晃洋
経済産業省 商務情報政策局 サービス産業課 役務取引適正化係長 下田 浩氏
(株)三菱総合研究所 主任研究員 高橋  衛


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