Golf Journal Back Number
2005 DECEMBER vol.78

日本はアジア太平洋地域のゴルフ界を
牽引していかなければならない
APGC会長 辻 暎一郎氏インタビュー
辻 暎一郎
辻 暎一郎(つじ・えいいちろう)
1929(昭和4)年生まれ。昭和60年から平成6年まで当協会国際委員。平成10年に国際委員会委員長に就任するとともに平成17年からは当協会理事を務める。2001(平成13)年からはアジア太平洋アマチュアゴルフ連盟(APGC)会長に就任。日本ゴルフ界の国際親善のみならずアジア太平洋地域のゴルフ振興に尽力している。
—— APGC(アジア太平洋ゴルフ連盟)の役割、アジア太平洋地域におけるノムラカップの意義を教えてください。

辻暎一郎氏(以下 ) アジア太平洋地域でゴルフを発展させていくことがAPGCの主旨です。そして、ノムラカップは、当該地域のゴルフ界発展の礎になっていく大会と言っていいでしょう。今年はノムラカップに過去最多となる16チームが参加しました。APGCの加盟も現在は26の国と地域。APGCは、当該地域のゴルフ界の発展に寄与していると自負しています。

—— 多くの国と地域が集まるわけですから、大会を開催する際は、様々な問題点があるのではないですか?

  国際大会を主催する団体は各々配慮していることですが、例えば、ご存知のようにイスラム教圏では、宗教上の理由で豚肉を食べられません。そのため、今大会ではメニューにどんな食材を使っているのかを表示したプレートを立てておきました。日本人にとっては、どんな肉を使っているのかは重要でないことかもしれませんが、イスラム教圏の人にとっては非常に重要なことなんですよね。こういうことを理解しないと、20近くの国と地域を集めたイベントを開催することはできません。
  多くの国と地域が集まって大会を開催するのですから、細かい配慮が必要です。ただ、ひとつ言えるのは、文化も政治も宗教も違う人々の心をひとつにしてくれるのがゴルフという素晴らしいスポーツなんだということです。

—— 22回目となった今大会は、1975年以来の日本開催です。30年ぶりというのは、ずいぶん時間が経過しているように感じますが。

  確かに30年間、日本で開催していませんでしたが、私はJGAの代表者として、常に「開催する国がなければいつでも日本でやります」と言ってきました。逆に言えば、それだけ多くの国と地域が、毎回手を上げてくれていたということです。つまり、アジア太平洋地域でゴルフが発展してきたといえるのではないでしょうか。

—— では、アジア太平洋地域のゴルフ界の中で日本はどうあるべきだとお考えですか。

  日本はもっと当該地域のゴルフ界に貢献すべき。私はアジア太平洋地域のゴルフ界のリーダーにならなければいけないと思っています。しかし、これまでを振り返ってみると、残念ながら「アジアのリーダー」だと胸を張って言えないのが正直なところです。例えば、多くの国と地域では、ノムラカップの名前の認知度は高まっていますが、日本で認知され始めたのはごく最近のことなんです。この原因は、JGAの宣伝努力が足りなかった点とメディアの対応にあると思います。ノムラカップは、日本人の※野村駿吉氏が設立に尽力され、日本人の名前のついた唯一の国際大会です。そういう意味でも、もっと日本で「ノムラカップ」の認知度を上げなければいけないと思っています。
  また、過去にゴルフの国際的な組織で役員をした日本人が少ないということも日本の国際貢献という意味では問題だと思います。そういう意味では、私が会長だから言うのではありませんが、日本人が会長をやっているということは、日本のゴルフ界にとって有益なことだと思っています。APGCの関係者が私を会長にと支持してくれているのが大切で有り難いことです。
  先ほども申し上げたように、アジア太平洋地域でゴルフを発展させていくことがAPGCの活動の主旨ですが、日本も同じような視野に立ち、当該地域のゴルフ界を見守っていかなければいけないと思っています。そういった意味でも、今年、ノムラカップを我が国で開催できたことは非常に喜ばしいことであります。日本のアマチュアゴルフの発展に寄与し、国際的に活躍する方を多く出し、ゴルフの素晴らしさを次の世代に伝え、ゴルフ界を発展させていくことが私たちの使命だと思っています。


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