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前日の練習ラウンドに続いて同組のラウンドになった石川遼が「貫禄あるし、オーラを感じた」と尊敬の眼差しを向けた中嶋常幸が一本スジの通ったゴルフで、1アンダーパー71の好スタート切った。6位タイは首位を行く横尾要と3打差。出場選手の大半がラフは深いが、フェアなコースセッティングと賞賛するが、タフなコースに間違いはない。3打差のビハインドは中嶋にとっては痛痒に感じないに等しい差だからである。
それにしてもショットが曲がって苦しいラウンドだった。そもそも1番ティインググランドに上がった中嶋はそこまで第1ラウンドスタートのティショット戦略を明確には考えていなかったらしい。練習ラウンドでは1番ホール(434ヤード・パー4)からドライバーをチョイスして強振したが、いざ本番の第1ラウンドとなると別ものらしい。ふと同伴競技者の谷原秀人の手元を見ると、3番ウッド。ティインググランド上の芝には先行組の選手がフェアウェイウッドやアイアンでティショットしたターフ跡がある。「よし、レイアップだ!」となったというのだ。しかし、3番ウッドの後の第2打がグリーンをオーバー、2メートルに寄せるもそれを外してボギーのスタートとなるものの、この攻略を1日守るところが歴戦の勇士。ドライバーを振ったのは4ホールに留まった。
圧巻は今大会話題の焦点となった感のある3番、660ヤードのパー5ホール。ドライバーを右の林に打ち込み、林の間隙を縫うリカバリーでフェアウェイに出すも、まだクリーク(4番ウッド)の距離が残った。それをグリーン手前の花道に運び、寄せワンを決めるパーを獲ったのだ。そんなスクランブル・ゴルフがインに入っても続き、3バーディー・2ボギーの結果だった。特に終盤、14番から3ホール連続で1パットのパーを拾い、最終ホールを迎えた。
ここでも、ドライバーを右に押し出して林の中。「5番アイアンで樹間を狙ったら、枝に当たらずのラッキーで」フェアウェイへ。残り157ヤードを9番アイアンで7メートルにつけ、バーディーのフィニッシュ。まさに、石川選手が「僕の乱調ゴルフを激励する余裕があるのに、自分のボールに対峙すると一瞬で集中できる人。スゴイ!」と舌を巻かせるこの日のパフォーマンスだった。そして、その当の中嶋も「もし僕が16歳のときにここに出たら、緊張のあまり多呼吸で救急車のやっかいになったことだろう。初めてのビッグゲームなのに石川くんはいい勉強をしている」とニュー・ヒーローを絶賛。この日の5,000人を越すギャラリーの大半からの声援を見て、「昔のAON(尾崎・青木・中嶋)時代を思い出した」と笑顔で語った。
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