長いラフ、固く速いグリーンの難コースで、抜群の安定感を見せる片山晋呉が着々と優勝街道を辿っている。「すべて勝つための準備をこなした。準備にやり過ぎはない」と公言して憚らない態度に、ナショナルオープン2度目の獲得作戦が確実に進行中という印象だ。
この日、2打差の2位でスタートした片山はフェアウェイキープに徹し、ティショットでラフへ行ったのが2回止まり。前半9ホールで唯一のトラブルは8番ホール。第2打のボールが小さい松に乗るアクシデントで、アンプレアブルにしたボギーだけ。「これだけ木があれば、一回くらい乗って当たり前でしょ」と涼しい顔。1バーディー・2ボギーの37で折り返した。
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ー中にも時間の余裕があれば、新兵器パターをマスコット・バットかわりに逆スイングするのが片山式リラックス術なのだろう。暇さえあれば左方向への素振りを何度も繰り返す。そのせいか、後半9ホールでも安定感あるショットのリズムとテンポに変わりはない。同伴プレーヤーの横尾要が、5アンダーパーの貯金を吐き出す苦戦プレーになったこともあって、片山の“マイウェイ行進”は順調に続くのだ。
10、15番をバーディーに仕留めて、通算4アンダーパーにしたが、17番パー3(180ヤード)で6番アイアンがグリーンを外れるボギー。そして最終18番では、2打で細い花道に運び、15ヤードのアプローチを絶好のバーディーチャンスに寄せた。これを沈めれば首位の小田孔明に1打差となる好機だった。「完璧なパットだった。ど真ん中から入るはずが、スパイク・マークかな、ボールが跳ねて外れた」と試合後に振り返る。もしも、このバーディーパットが沈んでいれば、首位と1打差で明日の最終ラウンドを迎えることになるはずだった。
「そうなったら、昨年の大会とまったく同じシチュエーション。それを避けられたのは神様の温情かも」とクールな顔でいう。昨年の日本オープン、霞ヶ関CC・西コースでの最終ラウンド、ポール・シーハンと1打差の2位でスタートした片山が、75を叩いて自分からゲームを壊した苦い経験が、そう言わせたのだろう。結局、この日はイーブンパー72で終え、首位と2打差で、最終ラウンド。小田孔明との最終組プレーを残すだけとなったのだ。
「初優勝が日本オープンだった人が何人いるか知らないが、このタイトルはそんなに簡単に獲れるものではない。明日の天候、グリーンの硬さとスピード次第で、優勝スコアは変わるが、今の僕の3アンダーパーというスコアでは勝てないだろう。だからといって、攻めるプレーをするつもりはない。今日のゴルフがまた100点だったので、明日も今日と同じゴルフをするだけ」と爽やかに言い切った。数試合前から、このゲームのために心技体を調整し、道具まで探求して来た成果が明日に試される。照準をこのゲームに定めた片山の結論がどう出るのか? 本人は「去年とほぼ同じ立場になり、どういう結果になるか。僕にも楽しみですよ」と今の自分の状況を正しく把握しているように見え、主役は片山晋呉…というドラマの最終幕があす開幕する。
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