誰もが、このタイトルを欲しがっている。
その勝ちたいという選手たちの情念が、強ければ強いほど、試合に熱気が充満して、とてつもない空気感が生まれる。メジャートーナメントのワクワク感は、きっと、そういう熱望の塊が醸し出すのだろう。
第1ラウンド、6アンダーパーで単独首位に立った下村真由美。
「実は、不安感のほうが大きかった」と、その心境を吐露していた。彼女は、予選会から挑戦して、本戦出場を果たした。「予選会の順位(16位タイ、2オーバーパーで予選カット。その後、繰り上がり通過)から、出られるとは思っていなかった」ので、練習ラウンドも1日しかしていなかった。
今季は、思うようなゴルフ
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ができていなかった。「シーズンオフにスウィング改造をし始めたのですが、それがシーズンに入るまで間に合わずにいたんです。ようやくなんとかなり始めたのが(8月の)アクサレディスのころですかね」
その下村が、出だし1番ホールから4連続バーディー。さらに7番ホールも獲ってアウト31。インは、15番ホールをバーディーとして35。トータル66の6アンダーパーでの首位に立った。
「女子プロ選手権のときもそうだったのですけど、とにかくダブルボギーを打たないで、我慢しようと心がけました」
彼女の第1ラウンドの決意……それは、苦しいときにジタバタしないことだった。
「ともかく、安全に、無理しない。ティーショットを曲げても、しっかりと刻んで次のショットにつないでいこう」というゲームを徹底したのだ。
「練習ラウンドを1回して、その時点で、(いまの自分のゴルフの状態を考慮して)自分が、どう攻めて行こうかと、決めていましたので、迷いはありませんでした」
刻む……米国では《レイアップ》という言葉が使われる。これはもともとバスケットボールのゴール下からのジャンプシュートをするときの言葉だ。蓄えて使わずにおくという意味合いが含まれている。だから、日本語の《刻む》という響きよりも、レイアップという言葉のほうが、賢い策という意味合いが多く含まれている。
下村は、そのレイアップを上手に使い分けながらプレーしたのだった。今年26歳。アマチュア時代、日本ジュニア、日本女子アマなど出場し2000年にはナショナルチームのメンバーにもなっている。
「我孫子は、ジュニアレッスン会でプレーしたはずなのですが、まったく記憶にないんですよ(笑い)」今週は、(コースから30分ほどの)実家から通っている。「やっぱり実家からはいいですね。匂いというか雰囲気が違います」
日本女子オープンのコースセッティング、特に、我孫子の巧みなレイアウトでは、勢いだけでは4日間のスコアに結びつかない。パワーだけでもなく、飛距離だけでもなく、メンタリティとフィジカル、そして技量がうまく解け合い、さらに勝ちたいと思う気持ちが空回りせずに、ほどよく1打
1打につなげていける選手たちが、上位に集まってくる。
下村の1打差に宮里美香、馬場ゆかり。さらに2打差で福嶋晃子、T・ダーディン……。
そのストローク差に、ひしめきあう選手たちの熱気は、ますます盛り上がる。
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