宮里美香、宋ボベの最終組が、ちょうど前半を終えて後半にターンするころ、宮里藍、上田桃子、諸見里しのぶを始めとするグループが、インの中盤にさしかかって激烈なせめぎ合いを繰り広げていた。
ちょうど首位を走る宮里美香を頂点に、次のゾーンに入り込み、最終ラウンドは優勝争いの渦の中で闘おうと、そのゾーンの壁を超えられる位置争いをしていたのだ。マラソンで言えば、独走に近い先頭集団との差を、どこまで縮められるかの争いである。
宮里藍が1番ホールをスタートした頃が「どしゃぶりの雨で、これは今日も我慢の1日かな」と空模様を伺っていた。ようやく小降りになった7番ホールで、幸先の良いバーディを奪った。そ
して8番ホールで第1打を左にミスして、第2打もグリーンに乗らず70ヤードを残した。「そのピンチをパーで切り抜けたのが大きい」と宮里は言う。
続く9番、そして10番ホールでバーディーとし、さらに14番ホールでバーディー。15番ホールでボギーとしたものの最終18番ホールでしめくくりのバーディー。68で終え通算4アンダーパー。「今日は、3日間の中でいちばん集中できてプレーできました。15番ホールをボギーとしても、いい意味で、ボギーでよし、と思えましたしね。昨日まで、アイアンショットがなかなかピンに絡まなかったんです。昨日、ホテルに戻ってテレビ中継で自分のスウィングを見ていて、下半身がしっかりと使えていなかったので(トップからインパクトにかけての)加速が欠けていたのだと気がついて、今日は、それを修正してスタートしました」と言った。「明日は、天気次第ということもありますけど、メジャーで、しかも、このコースでの戦いでは、最後まで、何が起こるか解らないと思っていますから…。彼女(宮里美香)は、プレッシャーをプラスに変えているプレーをしていますからね。やはりビッグスコアを出さないと……」とまだまだ、宮里藍も諦めていない。
宮里美香が、独走態勢に入ろうとしていた。その宮里美香のスコアを基準に、どういうプレーをしていけば、最終日、最終ホールまでに追いつけることができるだろう……。
これが、首位を追う彼女たちの最大のテーマである。「ようやく、いい準備ができました」というのは、やはり今季米ツアーを戦ってきた上田桃子である。
上田は、この試合でパッティングに苦しんでいた。日本女子オープンを獲りたいという気持ちの強さは、誰にも負けない。ところがパッティングが不調。「第1ラウンドからショットは、まあまあなのにパットが入らない。コーチから、(ストロークが)気持ちよさそうじゃないね、と言われて、少しハンドアップ気味に構えるようにしたんです。大事な試合で、急に治していいのか、悩んだのですが、どうせ(いままでの打ち方では)入らないなら、と思い切って治しました。ようやく今日はその成果がでたのだと思います」コーチから指摘されて修正しながら第3ラウンドになってしまっていた。
だから、パッティングのタッチも、通算4アンダーパーという位置も、なんとか踏ん張って優勝を狙える状態まで「やっときたな」という気持ちでホールアウトした。
「明日は、ビッグスコアが必要でしょう」そういって、目を輝かせた。
宮里藍と上田桃子……。米ツアーで、毎週のように、激しいゲームを戦ってきている。それは、最後まで諦めないという姿勢が、自然に心身に染みついているはずだ。
明日は、ビッグスコアという彼女たちのビッグスコアの基準は「65以下ですね」(上田)という。1日7アンダーパー以上のプレーを彼女たちは、目指している。いまの女子ツアー選手たちは、そういう基準値なのだ。「そこまで自分がしっかりと準備し、戦って、やり遂げて敗れたら運がなかった、うまくいえば運があったということだと思います」
最終ラウンド、最後の9ホールがほんとうの意味でのメジャーの戦いになる。
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