「これまでの試合で、3日目には、あまりいい思い出がない。スコアを崩すことが多かったので、確実なプレーを目指します」スタート前、そんなコメントを残して練習場へと向かった宮里美香。そこで待っていたキャディに念を押された。
「今日は、パーを重ねていけばいいからね」二人の息はぴったりと合っているかのように見えたが…。前半の9ホールは、ついにひとつもパーのない展開になってしまった。バーディーの後はボギー。連続バーディーの後は連続ボギーで、その後もバーディー、ボギーを繰り返す。キャディーとなにやらやり合いながらのプレーが続いた。2人は何を話し合っていたのか?ホールアウト後に宮里美香が苦笑いを浮かべな
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がら明かした。
「パーでいいといっていたのに、また違うじゃないか…と、責められ続けていたんです」
コース内に設置されたスコアボードで宮里美香のジェットコースターのようなスコアを確認したという藤田幸希は、「凄いなあという思いと、スコアボードの担当者は大忙しだろうなって思って、吹き出しそうになりました」と言った。
10番で、ようやくバーディー逃がしのパーがきた。ホールからボールを取り出した宮里美香は、キャディーに笑顔を向けてアイコンタクトした。「ほら、これでいいんでしょ」言葉ではなく、表情と目で、そう語りかけたのだった。「前半は、ショットが不安定で、曲がることがあった。なぜだろう。どうすれば修正できるのだろうと、そればかり考えていました。後半にターンするところで、ようやく、スウィングのリズムがいつもより速くなっていることに気づきました」
そして、ようやく生まれたパーだった。スウィングのリズムにも、気持ちの上も落ち着きを取り戻して、本来の安定したペースに戻った。パーを重ねてチャンスがきたら確実に決める。13、14番で連続バーディー。最終18番ホールでは、左ラフからの第2打をグリーンオーバーさせてボギーとしたが、それでも第3ラウンドは、またスコアを伸ばして通算11アンダーパー。「ドタバタの1日になってしまいましたが、結果的にはアンダーパーだったから、よしとします」
本選手権が宮里美香にとってプロとしての日本での2試合目になる。前回のNEC軽井沢ゴルフトーナメントでは、「初めて経験する大ギャラリーに圧倒され、プレッシャーを感じて」予選落ちしている。本選手権では「ギャラリーのみなさんからの声援や拍手が、後押ししてくれています」。実は、アマチュア時代も、USLPGAツアーでも、これほどのギャラリーの中でプレーした経験がなかった。
最終ラウンドは、最終組で福嶋晃子との直接対決になる。アマチュア時代に何度か同じ組でプレーしたことがある。
「私とは飛距離で30ヤード以上差があります。その差に圧倒されないように、自分のペースでプレーします。スコアの差も考えず、これまでの3日間と同じように目の前の1打に集中します」
史上最年少優勝、初の10代チャンピオンに向けて、自分との戦いに挑戦する心づもりでいる。
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