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出だし1番ホールの第2打をバンカー。そこからピン左手前5メートルに乗せて1パットのバーディ。幸先の良いスタートを切った水巻善典のショットのイメージは、フェードボールだった。「いや、日本オープンで第1ラウンド、第2ラウンドとアマチュアの伊藤誠道君と回って、若い選手の勢いを感じ取れて凄く楽しかったんです。そしたら次は、池田勇太君の一緒の組になって、彼がいい切れ味のフェードボールを打っていたんですね……そのとき、ふと、自分の若い頃を思い出して……あー、自分もこういう球筋で攻めていたんだなぁ、と思ってやってみたら、いい感じになったんですよ。それで日本オープン(武蔵CC・豊岡コース)のその日、バーディが5つも獲れたんですね」と言った。
フェードショットの切れ味は、この日本シニアオープン第1ラウンドに表われた。2番ホールでボギーとしたものの、続く4番ホールは、ピン横1メートル。5番ホールは、ピン奧1メートルの距離を沈めてバーディとした。
そして7番ホールでも左カラーから4メートルを入れて、この時点で3アンダーパーと上位に躍り出た。
「途中から、グリーン(の傾斜、芝目)が読めなくなってきたんですよ。後半、スコアカード通りのパープレーでしたが、1ピン以内の距離をかなり外していました。ちょっと丁寧にやりすぎたのかも知れません」
水巻のいう「丁寧に」という意味は、二つある。ひとつは「やはり日本シニアオープンというメジャーですから、丁寧に積み重ねていきたいという気持ちです。そして、もうひとつは、日本オープンの最終ラウンド、16番ホールで、50センチから3パットしたんです。それから距離のイメージがうまく掴めなくなってきていたので、丁寧に、と思ったんですけど、ちょっと後半は、丁寧(慎重になり)すぎましたね」と自身のゴルフを分析した。
実は、水巻選手はこの8月末に、父親を亡くしている。「プロゴルファーになって、どんどん上手くなっていったら、偉そうにならず、頭を低くし、謙虚にならなくては駄目だぞ」と言われたそうだ。そして「親父が、僕のプレーをいつも応援してくれていたことを思い出して、自分のためではなく、むしろ自分が頑張っていることで、いいプレーをすることで、みんなが喜んでくれるという気持ちになれたんです。いま、不思議に、自分が絶対に上に行きたいとか、勝ちたいとか、そういう(直接的な)欲望がないんです。」と言った。シニア入りしたのが、ちょうど昨年の日本シニアオープン。「ちょうど1年目なんですね」と感慨深げに呟いた。「少欲知足」少ない欲で足りるを知る、という言葉は、自分の身の回りは少欲知足で、残りは、人のために何かをする、ということだ。そんな気持ちを抱く水巻のゴルフが、あと3日間、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、楽しみだ。
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