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「日本シニアオープンは、ひと言でいうと目が三角になる試合だね」とは、中嶋常幸の大会評だ。
「シニア競技というと、普通は、かなり和やかな雰囲気の中で行われるのだけど、日本シニアオープンだけは、真剣勝負のピリピリした空気がコースを支配する。みんな優勝目指して、あらん限りの力を出し尽くそうとしてくるからね。みんな勝負師の顔になってコースに乗り込んでくるんだ」 |
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シニアトーナメントを観戦したことのあるファンは、どこかで、こんなシーンを目撃したはずだ。
選手とギャラリーが声を掛け合う。
例えば、バーディーパットをわずかにショートさせた選手が、ギャラリーに向かって声を掛ける。「ちょっと応援が足りなかったなあ…。もう少し大きな声で“入れ!”って叫んでくれたら、届いていたのに」。グリーン周りで笑いがおこる。 |
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ファインプレーを選手たちが素直に誉め合う。例えば、狙いどころが狭いホールのティーショットでしっかりフェアウェイをキープしたとき、一緒にプレーしている選手が「ナイスショット!」。
言われた選手も素直に喜んでいる。
微妙なパットを沈めると「上手いねえ…」とグータッチの格好で拳を伸ばしてくる。
沈めた選手が、応えて自分の拳を合わせる。 |
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尾崎健夫が言っていた。「シニアの1打には、若い時には無かった喜びがある。
同時にある種の諦めに似たものもある。諦めといっても、投げ遣りというんじゃない。
例え1メートル足らずのパットでも、真剣に狙う。必死に決めようとする。
でも、外れてしまうことだってある。若いころなら、そんなつまらないミスをした自分に腹を立て、怒りが込み上げてくる。
シニアになって、そういうミスをした自分を許せるようになってきた。
その代わり、そうしたパットが決まったときには、喜びが爆発しそうになる。
本当に嬉しいんだ。で、一緒にプレーしている選手たちも、いろいろな経験を積み重ねてきているから、言葉にしなくても、そのあたりの機微がわかる。だから、一緒になって喜んでくれるんだよ。勝負を競う相手ではあるけど、戦友でもあるんだ」 |
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シニアトーナメントの和やかな雰囲気は、年輪を積み重ねてきた選手たちが、お互いを認め合い、励まし合い、喜び合い、そして、その中に戦いがあるところから生まれてくるのだろう。しかし、日本シニアオープンとなると、選手たちは、他の試合とは異なる面を見せる。 |
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中嶋には、心密かに狙っていることがある。
ディフェンディングチャンピオンとしての連覇?それもある。しかし、本当の狙いは、さらに大きい。それは、青木功の4連覇という途方もない記録への挑戦だ。公式戦となると、どうしてもAON時代が蘇ってくる。AOを倒さなければ、けっして優勝には辿りつけなかった。日本シニアオープンという舞台では、遠い時代のライバル心が猛々しく燃え上がってくる。 |
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その中嶋との戦いを楽しみにしているのが尾崎健夫だ。
「負けたくないというより、勝ちたい相手だよね。日本シニアオープンという舞台では、やっぱり勝負にこだわりたいし、一番勝負したい相手だからね」 |
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室田淳も、打倒・中嶋に燃える。常に優勝候補の一角に挙げられ、実際優勝争いを続けているのだが、タイトルには届かない。ここ3年連続2位にとどまっている。
「中嶋さんに連覇はさせたくない。自分が優勝するためのカギ?それは、ある。パッティングだね。第3ラウンドまでは、積極的にストロークできるのに、最終ラウンドになると、決まって打ち切れなくなる。この大会では、特にそのパターンが顕著になる。3年続けて、それがあった。公式戦という意識が働くのか、独特の緊張感に襲われるんだ。だから、今年は、絶対にパットをショートさせない。それを自分に言い聞かせて戦う」 |
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尾崎健夫 |
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優勝争いを続けている室田淳 |
昨年に続いて賞金王を狙う飯合肇 |
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昨年に続いて賞金王を狙う飯合肇にとっても、日本シニアオープンの優勝賞金1600万円はビッグプライズだ。舞台となる琵琶湖CCは、大きなキャリーボールを打ち出せるパワーヒッターが有利といわれている。一方で93年日本オープンを例にとり、テクニシャン向きという声もある。琵琶湖CCで行われた93年日本オープン。最終ラウンドに奥田靖己が尾崎将司を逆転しての優勝を遂げている。パワーヒッターなのかテクニシャンなのか。その答えを出すのにシニア選手ほどふさわしい存在はあるまい。 |
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テクニシャンといえば、今大会には、かつての全米オープンチャンピオン、ラリー・ネルソンが出場する。
往年の技をどこまで披露してくれるか楽しみだ。 |
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この他にも、倉本昌弘、湯原信光、渡辺司といった屈指のショットメーカーや、日本オープンに次いでのメジャー制覇を狙う羽川豊らのプレーにも注目したい。日本シニアオープンでは、歴戦の勇者たちが、勝負師の顔になって参集する。 |
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倉本昌弘 |
湯原信光 |
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ラリー・ネルソン |
渡辺司 |
羽川豊 |
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