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【中庸の精神状態が好スコアを呼んだ金田久美子】 |
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第1日
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競技報告:三田村昌鳳 写真:G.Kobayashi /Y. Watanabe |
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オンとオフという表現がある。精神面や仕事と私生活などスイッチをオン・モード、オフ・モードに切り替えるときに、よく使う言葉だ。
金田久美子の自宅から、今回の名古屋ゴルフ倶楽部までは、20分ほどで通える。地元だけに試合中「家からコースへ通うつもりでいたけれど、父親に今回は、ホテルに泊まって、そこから通ったほうがいい」とアドバイスされた。
「最初は、わざわざそんなことする必要もないかな、と思ったんですよ。それに、ホテルから通うほうが、5〜10分ほど遠くなるし…。でも、よくよく考えると、家からだと、居心地がよすぎて、朝もグズグズしちゃうなぁって、思い直したんです。試合モードに入りにくいか
な、と」
地元での大会。金田久美子にとっては、どうしても気合いが入りすぎる。勝ちたい、いい成績を残したいという気持ちが、先に行きすぎてしまって、現実のショット、プレーと同調しきれないわけだ。
ほどよい緊張感を保ちながら、どこか精神的にも余裕をもち、しかも戦闘モード……と、よく言えば、中庸。ちょうど弓の弦の張り具合と同じで、張りすぎても緩すぎてもいけない。それは言い換えると、なんとも矛盾した心情になるわけだ。
「正直な話。(地元のプレーで)空回りして、結構打つ(スコアが悪い)かなと思っていたけれど、あんまり気合いを入れないようにやろう(笑)って思っていました」
それでも「練習日よりも(今日の試合のほうが)30ヤードもドライバーショットが飛んでいる」と言った。自然に反応して、精神的には余裕をもたせているつもりでも、気合いは入ってしまう。そのほどよい加減が、第1ラウンドでゲームを壊さないで回れた原因であろう。
インからのスタートで、11番でバーディをとり、そのあとずっとパープレーでやってきた18番ホールで、金田はダブルボギーを叩いた。通常、ボギーならば許容範囲。ダブルボギーは禁物というのが、メジャーでのゲームプラン。折り返し地点になる18番のダブルボギーは、流れを乱す、壊す要因になりかねない。
「確かにダブルボギーは痛かったけれど、あれは、7メートルのファーストパットで、ラインが見えちゃっていたんです。見えちゃったから、入れにいっちゃったんですね(笑)。それが強めに入って3メートルもオーバー。しかも、その3メートルも、ラインが見えちゃって……。だから、ダブルボギーといえども、このコース(セッティング)だからこそ心の整理がついて、後半の9ホールに入れました」
第1ラウンドは、イーブンパーの70。首位グループにつけた。「気合いが入り過ぎると、ミスしたときでも、ついカーッとなりがちですけど、今日は、ほんとうに我慢のゴルフができて、こういう気持ちでいいゴルフに繋がるなら、この気持ちを忘れずにいきたいと思います」
今季は、シーズン始めのダイキンオーキッドレディスから調子が良く、3試合目になるフジサンケイレディスで初優勝した。その優勝が、心のゆとりの源流になっているのだろう。もうひとつ、金田は、ここ数年体力も付き始めている。「疲労感や疲れすぎて眠れなくなることもありましたけど、去年と比べても飛距離が落ちるところまでにはなっていないので、体力がついているのだと思います」
ジャック・ニクラスが言ったことがある。「肉体が精神力を支え、精神力が肉体を支える」その上で、いいショット、いいゲームができるのだと。金田久美子が、残り3日間、どんな心情でプレーするのか、楽しみである。
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