|
|
|
|
|
|
【両親のハッパに応えた馬場ゆかりが混戦を制覇】 |
|
|
第4日
|
|
競技報告:塩原義雄 写真:Y.Watanabe |
|
|
|
|
ウイニングパットを沈めて |
|
|
|
ウイニングショットとなった 18Hでのセカンドショット |
|
トーナメントリーダーでスタートした馬場ゆかりは、8番ホールまで迷いの中にいた。もがいていた。喘いでいた。昨日までのショットの感覚が消えていた。あれだけしっかりと決まっていたショートパットの読みも、タッチも合わなくなっていた。ピンチを自ら招いてしまう。そして、そのピンチをしのげない。2、3番に続いて5、6番でも連続ボギー。さらに8番でもラフを渡り歩いたあげくに短いボギーパットもカップに蹴られてダブルボギー。この時点で、同じ最終組でラウンドし、逆転を許していた笠りつ子に4打差をつけられていた。
スコアメイクに苦しまされることはスタート前から覚悟していた。「でも…」と馬場。「あそこまで崩れると
は思っていなかった。ワタシ、何をやっているんだろう?」ただ、崩れる一方の展開に、手をこまねいていたわけではなかった。苦しい中で、なんとかフィーリングを取り戻そうと、懸命の修正を図りながらのラウンドだった。
9番ホール。その時がきた。本来のリズムでフェアウェイに打ち出せたティーショット。8メートルにパーオンさせたあと、この下りのフックラインのパットが最後のひと転がりでカップ右縁から沈んだ。ラインの読み、ストロークのタイミングもピッタリ決まった会心のバーディであった。前日までのショット、パットの感覚を取り戻した。ここから気持ちもリセットできた。
「もったいないボギーを叩かないように、我慢していけば、まだ(優勝の)チャンスはくる」笠が、8番からの3連続ボギー、さらに14、15番の連続ボギーでスコアを落とし、前をいくアン・ソンジュも16番のボギーで通算12オーバーパーに。この時点で馬場の思惑どおりにトップ(タイ)の座が、向こうから寄ってきた。そして、最後は、自分の手で優勝を手繰り寄せた。
笠と並んで迎えた最終18番。今大会で最も平均ストロークが高かった難ホールだ。逆風だった。馬場は、その風を顔に受けながら、心を決めていた。「絶対にフェアウェイに打つ。逆風の中に低く、ラインを出していくショットは、自分の最も得意とするところじゃないか。打てる」
完璧なドライバーショットだった。ピンまで179ヤード、やはり逆風に向かっての第2打地点で、3番ユーティリティクラブを手にしてまた心に決める。「これまで、同じような優勝争いの中で、自分が失敗してきたことは何? 丁寧にいこうとしてスウィングが緩んでしまったからじゃないの? ここは、絶対に後悔しないショットを打とう。緩みのないショットでピンを狙う」ピンにまっしぐら。笠はティーショットを右ラフに入れた後のレイアップからの3オンだったから、事実上のウィニングショットであった。
2008年のライフカードレディスいらい遠ざかっている優勝。今季は、不振続きだった。仙台でのミヤギテレビ杯のとき、両親から衝撃のメールが届いた。「もう、あなたの試合を見に行かない。あなた、昨年分の税金払えないわよ。貯金ないからね」 優勝者へのインタビューで、馬場は苦笑いを浮かべながら、このエピソードを明かした。「本当は、秘密にしておかなければいけないのかもしれませんが、あまりにもショックなメールだったので…。本当に頑張らなければいけない状況に追い込まれているんだって思いました」
我慢比べとなった今年の日本女子オープンで「最後はサンデーバックナインが勝負」と、わずか1ボギーにしのぎきった馬場の発奮材料のひとつが、この衝撃メールであった。「早くツアー3勝目と、メジャー優勝を果たしたいと思ってはいたのですが、まさか、いっぺんに実現するとは思いませんでした」
この優勝をきっかけに、まだまだ勝つつもりでいる。9番ホールで転機を迎えたように、この優勝が、馬場のこれからのツアープロライフの大きな転機になるに違いない。
|
|
その他の記事はこちら
|
戻る
|
|
|
|
|