2011年度(第76回)日本オープンゴルフ選手権競技
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Championship Reports
競技報告
【イップスは友達みたいなもの…と達観した佐藤信人が単独トップに立つ】
第3日 競技報告:塩原義雄    写真:G.Kobayashi /Y. Watanabe
強風が吹き荒れる悪コンディションをものともせず、佐藤信人がベストスコアタイの3アンダーパー68をマークして通算6アンダーパーにスコアを伸ばして2位のベーシックに2打差をつける単独トップに躍り出た。通算9勝。その中には日本プロゴルフ選手権、日本マッチプレー選手権、日本ツアー選手権というビッグタイトルも含まれている。かつては“日本タイトル男”とさえ称されていた佐藤だが、ここ2年間はシード権を手にできず、ほとんどレギュラーツアーで姿を見ることはなかった。栄光からの転落は、持病の腰痛と、突然襲われたパッティングイップスが原因だった。

「この2年は、それまでの貯金を切り崩して生活していたけど、それ
も底が見え始めて第二の人生を真剣に考えなければならないな…と、そちらでも追い立てられるような気分にもさせられていました」といって、すっぱりとゴルフと縁切りすることなどできない。なんとかもう一度レギュラーツアーの舞台で戦いたい。やはり、そちらの思いの方が強かった。そのためには、イップス病を克服しなければならない。この病は、精神的な原因からとりつかれるといわれている。

楽にストロークできるようにと長尺パターを使うようになった時期もあった。パッティングの練習器具を利用しての反復練習も試みた。パターは、何本替えただろう。練習ではスムーズにストロークできるのに、試合の緊張感の中では、やっぱり手が動かなくなる。メンタルコーチについてカウンセリングを受け始めたのが二年前だった。強迫観念から脱するには、ミスする自分を許すところからはじめなければならない。練習器具は、自分の動きを機械化するメリットはあるが、イップス症状のあるものにとっては、型にはめられてそこからはずれると大きなミスをした気持ちにさせられるというデメリットもある。

佐藤は練習器具を捨てた。それよりも、自分の感覚を呼び覚ますことに方向転換したという。

「ラインも厳密にボール2個分左…とやるのではなく、あのあたりだな…と感じたままに、さっと構えてさっとストロークする。その練習をいろいろなラインで本当に何度も何度も繰り返しました。すると、段々と自分のカンを頼るに値すると思えるようになって、ミニツアーやチャレンジトーナメントでも、さっと読んで、さっと構えたら、さっと打つようにしました。今大会でも、その調子で続けています」第3ラウンド。5バーディを奪ったパットだけでなく、どれほどのパーセーブパットがあったことか。特に後半のグリーン上では、小さなガッツポーズの連続だった。11番では、8メートルのパーセーブパットが決まった。13番のバーディパットは下りの7メートルだった。15番パー3では、バンカーから寄せた2.5メートルの大きく右に切れるラインを沈めた。16番も1パットのパーでしのいだ後、17番では下り6メートルのフックラインを決めてバーディを奪った。

「いやあ、いいパットが気持ち悪くなるぐらい入りまくりましたね。入っても、入らなくてもいいやって、投げやりではなくて、自分のカンを信じて結果を求めずにストロークする。その後で結果を素直に受け入れる。今の自分にできるのは、それだけです。腰痛とイップスはある意味で同じだと思えるようになりました。完治はしない。いかにうまく付き合っていくかだと思えるようになりました」

9年ぶりの優勝が見えてきた。緊張のピークの中でのプレーになることは覚悟している。同時に「その中で、自分がどうなるのか。今現在の本当の姿が出てくると思うんです。それを知るのが、怖いような、楽しみなような…。緊張、不安、恐怖。今の自分には、すべてありがたい環境なんです。だから、最終ラウンドは、どうなってもいい。イップスに襲われようが、優勝しようが、急降下しようが、自分を受け入れる覚悟だけはしています。本当に、どんな姿の自分が現れるんでしょうね?」

41歳のベテラン、気負いの気配もない。

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