第1ラウンドを、5バーディ・1ボギー68の6位タイで終えた中嶋常幸は、ホールアウトして、嬉しさの表情よりも、ため息混じりの困惑した表情だった。「うーん。なんだかなぁ。スコアは確かに悪くないんだけど、フラストレーションが溜まるラウンドだったんですよ」と,浮かない。理由をしつこく聞いてみると「スウィングが、ちゃんとできていない。手打ちのゴルフ。その理由は、右股関節周りの痛みなんです。あんまりこういうことは言いたくないんだけど、この数年ずっとあちこちの痛みで、まともなゴルフができなくなっているんですよ。最初が、首でしょう。それが治ったら背中、そして膝、今度は右股関節。まるで痛みのメリーゴーランドなん
だもの。フラストレーションが溜まるのもわかるでしょう」と、その辛さを吐露してくれた。それでも4アンダーパーは、ゲームマネージメントの勝利だろう、と言ったら「勝利?」と言い返された。
特筆すべきは、8番(パー5)で左8メートルのスライスラインを入れてのバーディをもぎ取ったことだ。それで多少、フラストレーションの溜飲が下がった。
「とはいえ、この大会の歴代チャンピオンなんだから、しっかりとしたプレーをして頑張るしかないと思う。あと3日間、痛みが軽減されることを祈りながらね」と言葉少なげに語った。
「それよりも、海老原清治さんですよ。僕と同じ68だけど、海老原さんのほうが、素晴らしく価値がありますよ。だってエージシュートですよ」と中嶋が語ったのは、この日、68歳の海老原清治のエージシュート達成だ。実は、海老原は、シニアツアーでのエージシュートは、これで2度目。つい2週前のコマツオープンの最終ラウンドに66をマークして初めて達成している。
「ハーフを終えて、あ、ひょっとするといけるかなとは思っていたんですけど、まさかですよね(笑)。残り2ホールになって意識しちゃった。ちょっとパッティングが緊張していいストロークできなくなったんだけど、やっぱり嬉しいなぁ。同組の中嶋くんも一緒になって喜んでくれて、いやー、ほんとに嬉しい。やっぱりね。プロのエージシュートは、アンダーパーで回れての達成が大事だと思うんですよ。もちろん、一般のアマチュアの人なら、75歳、80歳、90歳での達成も喜ばしいわけですが、プロは、(72歳までに)いくつ達成できるかが大事でしょう」と、嬉しさを隠せない。PGA競技では2015年関東グランドシニア(66歳/65ストローク)、2017年関東ゴールドシニア(68歳/65ストローク)し、今回で4度目のエージシュート。68歳の海老原は、まだまだ大きな可能性がある。
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