元祖・怪物と称される川岸良兼は、シニアツアーのルーキーとして注目されている。初優勝を目前にしていたのは、6月の『第18回スターツシニアゴルフトーナメント』だった。最終ラウンドを単独トップで迎えた。そのまま逃げ切るかと思われたが、立ちはだかったのがマークセンであった。川岸が5バーディ・5ボギーと出入りの激しいゴルフで伸び悩み、パープレーで終わったのに対して、マークセンは68と追撃の手を緩めることなく、通算11アンダーパーまでスコアを伸ばして1打差で逆転優勝をさらっていった。川岸は諸先輩プロから「お前がもうちょっとしっかりしたゴルフをしていれば、マークセンに(優勝を)もっていかれることはなかったのに…」と、さんざ言われたそうだ。「僕だけの責任じゃないと思うんですけどねえ」(苦笑)
愛娘で女子プロの史果も、ルーキーイヤーで活躍している。「どちらが先にツアー優勝を果たすか。父親としては、娘に負けるわけにはいかないので、先に優勝してオヤジの威厳を示したいですよね」
シニアツアー入りする前、川岸には苦しい時期があった。忌まわしいアプローチイップスに襲われていたのだ。週1回のペースでジャンボ尾崎邸に通い、敷地内の練習場でボールを打たせてもらっていたというが、アプローチ練習は、尾崎が昼休みでいなくなるのを待ってから始めたそうだ。「見られたら恥ずかしいのと、からかわれるのが嫌だったから」というのが、その理由だった。
「ボールをきれいに打とうとし過ぎていたのが、イップスに襲われた原因だということがわかるのに、ずいぶん時間がかかりました。ボールの手前からソールを滑らせていく。それとミスした自分を責めないこと」。イップスから脱するのに5年もかかったという。シニアツアー入りにどうにか間に合った。
ツアー初優勝のためには、打倒マークセンが必須条件になるだろう。川岸は、同組での対決を熱望している。
「タイの人は穏やかだと言われているけど、マークセンは、けっこう熱くなって無茶をすることがある。彼のペースでゲームが進んだら、突っ走られてしまうから、ペースを乱す必要があるんです。同じ組で回れたら、とにかく日本語で無茶苦茶に話しかけてムッとさせてやります。これが、僕の打倒マークセン策ですね」(大笑い)