スタート前の練習場。井戸木鴻樹は、ドライバーショットを練習していて、どうしてもボールが右に逸れてしまっていた。そして「いざコースに出ると、今度は、ボールが左にしかいかなかったんですね。朝、ちゃんとシャフト置いてチェックしたいたつもりだったんですけど、気がついたらアドレスでの球の位置が、左(外側)に少し行っていたことに気がついたんですよ」と言う。スタートの10番でボギー。12番でバーディを奪ったものの、14番でボギー。そのときに、ボールが左に行く原因は、ひょっとしたら、アドレスでのボール位置の違いかも知れないと思って、そこを修正してみた。その修正で、ボールをしっかりと捉え、狙ったところに落とすこ
とができた。
「確かに、練習場では、左からの風が吹いていたんですね。だから右に流されるボールになっていたのかも。それをアジャストするために、知らない間にボール位置が左に行っていたのかも。そのままスタートしたから、左にしか行かなくなったと、今思えば納得です」でも、気力満々のテンションでスタートするときは、細かいチェックまで気がまわらないほど前向きの気持ちが勝ってしまっていたのだろう。
前半を1オーバーパーでターンして、ボール位置を修正したあとの後半、1番からいきなりバーディ。そして、4、8番のバーディを奪い、33のスコア。トータル70でホールアウトして、通算9アンダーパーの3位タイにつけた。
「マークセンがねぇ。一人異次元のゴルフですからね」といいつつも「でも、ゴルフは何が起こるかわからないし、何が起きても不思議じゃないですから。自分は、自分のプレーに集中してやるだけです」と、口を引き締めた。マークセンと井戸木のドライバーショットの飛距離差は、最大60ヤードあるという。その飛距離差は、第2打の距離とクラブの番手に影響する。でも井戸木は、飛距離差を正確なショットやショートゲーム、パッティングでカバーして、2013年全米プロシニアゴルフ選手権にも優勝できた。その後、米シニアツアーやシニアメジャーで戦い抜いている。
「やっぱりね。世界的にも50〜55歳のシニア選手たちは、飛距離が俄然、違います。飛んでいますね。ゴルフが面白いのは、そういう中でも、(飛距離が落ちる)我々にも十分チャンスがありますからね。だから戦えるし、戦い甲斐があるんだと思いますね」残り2日間、9打差。その大きなストローク差でも、食い下がっていくところが井戸木のプレー姿勢なのだろう。
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