台風18号の影響で月曜日に順延された最終ラウンド。マークセンに緊張感は、なかった。というより、ちょっと気の抜けた印象があった。マークセン自身、コースに来た時、体に力が入らず、違和感を抱えていたという。
「いつもなら、日曜日にプレーを終えて月曜日は移動日になるか休みになる。月曜日に最終ラウンドのプレーをすることになって、体は勝手に休みモードになってしまったのかもしれない」。その上、2位に8打差という大量リード。「3、4打差をつけていたことはあるけど、8打差は初めての経験。どんなプレーをすればいいのか、気持ちの整理もついていなかった」。
それは、そうだろう。実のところ、今大会は第2ラウンドを終
えたところで終わってしまったような流れであった。マークセンの連日の63で、追撃する選手たちも口では「まだ何があるかわからない」と言いながら、本音のところでは、もう優勝はマークセンのものという諦めの心境になっていたのではあるまいか。
コマツ・オープンで金鍾徳とのプレーオフに敗れ、いったんタイに帰国して気分転換を図って戻ったマーク戦は、月曜日に練習ラウンドすると「このコースは、自分にとってすごくプレーしやすい」と確かな手応えをつかんでいた。そして、本番に向けて「とにかく、最初の2日間でいいプレーをしてビッグスコアを出す。あとは、それ次第でプレーを考える」と、青写真を描いていた。まさに、その通りの展開、いやそれ以上の流れになり、独走の大会連覇となった。最終ラウンドは、さすがにモチベーションを保つことができず、4バーディ・6ボギーと、らしからぬプレーになったが、それでも通算18アンダーパーは、1999年大会でグラハム・マーシュがマークした大会最少優勝スコアを2打更新するレコードとなった。
今大会の優勝賞金1600万円を加えて、今シーズンの獲得賞金は5888万6875円となり、こちらも2位以下との差を広げ、連続賞金王にも大きく近づいた。今年最大の目標にしていたのが「賞金王になってアメリカのチャンピオンズツアーのQTに挑戦し、突破すること」だった。
大会終了後にクラブハウス内で行われたパーティーで、先にコースを去っていた鈴木亨と井戸木鴻樹からマークセンへのメッセージが残されていて披露された。
「来シーズンは、アメリカで頑張れ!」
別格の強さを発揮するマークセンに半ば冗談、半ば本気のメッセージであった。
当のマークセンは、「QTを突破できれば、アメリカ中心のスケジュールになると思うけど、日本のシニアツアー、レギュラーツアーに出られる試合には出場したい。“あんな小さな体でどうして飛ぶんだろう”とか、“アイアンショットの切れ味は、どこから生まれるのか”といった興味を持って見てもらえるのではないか。見せて楽しませるのも、プロとしての仕事だとおもうから、できるだけ多くの人に見てもらうためにも、いろいろなステージでプレーしたい」。
来年は3連覇のかかる試合になる。「QTを突破しても、日本シニアオープンには、帰ってきます」
メッセージを残した両選手の願いとは、ちょっと違った展開が待っていそうだ。
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