同組でラウンドした畑岡奈紗は、ユ ソヨンのプレーに感心しきりだった。「普通に打って、普通に決めて、当然のように7バーディでしたからね」3連覇を狙う畑岡の目の前でソヨンが見せたパフォーマンスは、確かに派手なものではなかった。連日の雨で柔らかくなったフェアウェイには、高いキャリーボールで距離を稼ぎ、ソフトなグリーンへのショットはピン近くへ狙い撃つ。7バーディ・ノーボギーは、数字的には圧巻のプレーだったはずなのだが、実際は淡々としたプレーの連続だった。冷静だった。2番(パー3)で6番アイアンのティーショットを1メートルにつけて初バーディを奪った後の3番(パー5)で、ピンチに立たされた。第2打を林に打
ち込んだ。そこからの第3打。前方には木の枝が張り出していた。ピンはバンカー越えに立っている。「自分にとって、答えはひとつしかなかった。枝の下をいく低い弾道のショットで、ピンに寄せやすいバンカーに入れること。低い弾道なら、目玉状態になる心配がないし、雨で湿った砂は、スピンをかけやすい。パーセーブするためにベストの方法を考えれば、すぐに、その答えを導き出せた」。
曲げたショットの原因もつかんでいた。「スウィングのリズムが早くなっていました。次のホールからは、自分の感覚の中では、ダウンスウィングに1.5秒ぐらいのつもり(実際には一瞬だが)で、ゆっくりと腕を振り、クラブを動かした」ということで、修正にも時間はかからなかった。そこからは、6番で1.5メートル、7番3メートル、11番1メートル、13番1メートル、14番3メートル…とチャンスを作り続け、決め続けた。
ちょっと悔しがったのは15番で5メートルのチャンスを逃したときだった。しかし、冷静さを欠くことはなかった。「すぐに取り戻そうとは思わなかった。なぜなら16、17番はタフなホールだからバーディを狙うよりパーで切り抜けることを優先させたい。その代わりに最終18番(パー5)は、絶対にバーディで締めくくろうと思っていました」。実際に、その計算通りの展開にして見せた。
日本女子オープンには、特別な思い入れがある。2009年の中国女子オープンを制し、その後カナダ女子オープン、2011年には全米女子オープンの優勝もさらった。「ナショナルオープンは、それがどこの国であっても難しいコースセッティングで挑戦のし甲斐がある。だから“ナショナルオープン・コレクター”と呼ばれるようになりたかった。日本女子オープンのタイトルも、そこに加えたい」。
エビアン・マスターズから調子も急上昇している手応えを感じているという。元世界ランク1位のソヨンは、その座への返り咲きも意識し、それをモチベーションアップの糧にしてもいる。
「素晴らしいスタートを切れたので、このまま最後まで走り続けたい」。心配は台風24号が迫ってきていること。ソヨンにとっては、相手はフィールドにいる選手ではなく、自然の脅威ということなのだろうか。
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