最終ラウンドのユ ソヨンは、格の違いを見せつけるようなゴルフだった。それは、世界基準のスマートな18ホールであった。第1ラウンド、同組で対決した畑岡は、ノーボギーで7アンダーパーをマークしたソヨンのプレーを「普通に、あのスコアを出していた」と表現していた。何か特別なことをやるわけではなく、やるべきことを淡々とやっただけ…といったニュアンスだ。当のソヨンは、3ホールを終えたところで、早くも自分の調子をつかみ、「自分のペースでやればいい試合」と、この試合をとらえていた。第3ラウンドには、それを別の表現で、こう口にしていた。「スマートなクラブ選択と、コースマネジメントができている」と―。
最終ラウ
ンドには、それを如実に物語るシーンがいくつかあった。例えば3つ目のバーディを奪った9番だ。右ドッグレッグのパー4ホールである。ティーショットはフェアウェイ左サイドへ狙い打ち。絶好のポジションからの第2打は、これまたピン左手前に狙い打った。手前3メートル。同組の菊地絵理香は、それよりも近い1.5メートルにつけた。ちょっと距離を残しても上りストレートなラインになるソヨンは、計算通りにバーディパットをカップ真ん中から決めた。菊地の1.5メートルは、ピン横で、微妙に切れる下りライン。はずした。
続く11番(パー5)では、こんなことがあった。ともに第1打はフェアウェイをとらえていた。第2打。菊地はフェアウェイウッドでフルスウィングした。ボールは、狙いよりもわずかに右に飛び出し、深いラフに入った。ソヨンは、まだ残り距離はたっぷりあるというのにアイアンで平坦なエリアに打っていった。ソヨンは楽々パー。一方の菊地はラフからの第3打をグリーン左奥にオーバーさせ、ボギーとなった。
チャンスを作り出すのは、ショット力だ。この大会、ソヨンは第1ラウンドの数ホールを消化したところで、自身のショットの好調さを確信できていた。そうであれば、計算したゴルフができる。といって、4日間、全て狙い通りのゴルフができるわけではない。ピンチも訪れる。そのときは、どうするのか。最終ラウンド、唯一のピンチとなったのは14番だった。ドライバーショットを右ラフに打ち込んだ。第2打はグリーン右サイドの深いラフに転がり込んだ。砲台グリーンに立つピン。難しい状況でサンドウェッジのフェースを開き、ラフの抵抗を減らせるようにしてドンと打ち込んだ。柔らかく上がったボールは、グリーンに着地すると、ゆっくりと転がり、ピンそば30センチに。「お先に」のパーであっさり切り抜けた。ソヨンはスピンをかけるアプローチショットには「5種類あって、それを状況によって使い分ける」と言った。これは、そのうちのひとつだった。
自分の調子を正確につかみ、コースを知り、戦略を立てる。今は、どんなゴルフができるのか。それによって、コースマネジメントも変わってくる。ソヨンは、世界基準のスマートなゴルフを、この大会で実践した。4日間で奪ったバーディは17個。ボギーは第2、第3ラウンドのそれぞれ1個だけの計2個。特別なことをするでもなく、ツキに頼ることもなく、出すべきスコアを出し、勝つべくして勝った。会心のゴルフで優勝。自身の記憶にも残る大会初優勝であろう。
「9番のバーディで2位以下との差が開いたので、後半は、セーフティなゴルフを意識してプレーしました。今日のプレーには、大変満足しています」
堂々たるコメントでインタビューも締めくくった。
|