6番の7メートル。このパットが決まったことで寺西の中にある変化が起きたという。練習ラウンドのときから感じていたことがあった。「難しいコースで、どうすればバーディをとれるのだろう…」と考えさせられていたのだ。第1ラウンドも、スコアはイーブンパーだったものの、内容は1バーディ・1ボギー。そう、バーディは「たったひとつしかなかった」(寺西)。そこで、バーディを沢山は獲れないのなら、ボギーも叩かないように辛抱すること。それを自分に言い聞かせて第2ラウンドに臨んだ。
1番からチャンスはあったがバーディパットは決まらなかった。辛抱した。そして6番でこの大会2個目のバーディが決まった。「辛抱していれば
、良いことがある。そう思ったら、なんか気が楽になったんです。すごく効き目の強い良薬を飲んだような気がして」
続く7番では4メートルが決まった。さらに8番では1メートルにつけたチャンスをものにした。なんと3連続バーディである。「どうやったらバーディを獲れるのかと思っていたのに、ひとつ良いパットが決まったら、立て続けにバーディがきて、そこまでの辛抱が報われた気がしました。本当に6番の」バーディは良薬でした」。
後半にターンして12番で3パットのボギーを叩いても、「ここは、昨日(第1ラウンド)もボギーで難しいホールなんだから、致し方なし。3パットをしたことよりも、しっかりパーオンできた自分を褒めてやろうじゃないか」。完全なプラス思考になっていた。すると14、15番で連続バーディ。この時点で先にホールアウトしていた谷口徹と通算4アンダーパーで並んだ。17番(パー3)では、バンカーに打ち込みボギーとして1打差に後退したが、ホールアウト後も穏やかな雰囲気が崩れる気配はなかった。
「ショットもパットもよかった。おかげで、この難しいコースにうまくつきあえました」。
実は大会前にエースドライバーのヘッドが割れてしまうアクシデントに見舞われた。本大会には“控えドライバー”で臨んだ。「そのドライバーともうまく付き合えています。期待しすぎず、かといって不安を感じることもなく、適度にコントロールできています」。
30歳でゴルフを始め、アマチュアとして活動しながら腕を磨き、49歳でプロテストに合格し、シニアツアーでの戦いをスタートさせた。同時に、製造業の会社を営む社長さんでもある。「関係者の皆さんの支えで両立させてもらっています。感謝です」
第3ラウンドは、谷口との最終組対決となる。そのことに水をむけても、穏やかな表情で、笑みを浮かべながら「日本プロチャンピオンと回れるなんて楽しみ以外にありません。自分もいいゴルフができたらいいな…と、そんな感じです」
昨年のシニアツアー最終戦で初優勝。2勝目は、ビッグタイトルになるか?
「いえ、いえ。この難しいコースですから、いつコケるかわかりません。いい付き合いができるといいですね」。
気負いをまったく感じない。大人のゴルファー。そんな好印象を抱かせる。
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